「私を信じて……」
 
 
信じていたはずだったのに、壊れた俺の耳に彼女の言葉は届かなかった……
 
 
 
 
 
 
 
まった世界てに
 
 
 
 
 
 
 
気がついた時、俺の目に映ったものは惨劇そのものだった。
真っ赤な血で染まった部屋。そして、倒れたまま2度と動かないであろう2人の姿……
 
俺はこの手で何をやったんだ?
震える手に握り締められているのは、血だらけのバット。
このバットで……俺は………………
 
 
仲間を、殺した。
 
 
 
 
 
 
 
「うわあぁぁああああぁあぁぁあああ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
何処から間違えたんだ?何処からおかしかったんだ?
オヤシロ様の祟り?そんなもの、最初から存在してなかったんだ。最初から、何もおかしくなかったんだ!!
 
おかしかったのは…俺だったんだ。
レナでも魅音でもなく、俺が、全てを壊した。どうしてだよ…どうしてこんな事になったんだよ!!
 
 
 
 
魅音に金属バットを振り下ろした。
鈍い音を立てて、魅音は倒れた。ピクリと動く。俺を怯えた目で見つめる魅音の目が、怖かった。
だから、何度も金属バットを振り下ろした。
そして、しばらくすると、魅音は動かなくなった。
 
 
 
「け、圭一くん………」
 
 
 
今更何言ってるんだよ。圭一くん?何度も、俺の事を殺そうとしたくせに!
追い詰めようとしたくせに!!2人で、俺を!!気が狂いそうだった。壊したのは、楽しかった日々を壊したのは、レナじゃないか……
 
 
 
レナに向かって金属バットを振り下ろす。
レナの肩に直撃した時、魅音の時と同様にゴキンと、嫌な音がした。制服に、血が滲む。
 
全身殴られて傷だらけになりながら、腕もへしゃげ、額も割れて……
 
 
 
こんな事をしても、俺の胸に罪悪感なんて感じなかった。
もう感情なんて無かったのかもしれない。おかしくなった俺には、全てが敵だった。
自分以外は誰も信じられない。レナも魅音も、そんな俺を元に戻そうとしてくれていたのに……!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
オ ヤ シ ロ サ マ ・ ・ ・
 
 
 
 
本 当 ニ 狂 ッ テ イ タ ノ ハ 誰 デ ス カ ―――――― ?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「圭一くん…………」
 
 
彼女の声はもう誰にも届かない。
 
 
 
 
 
 
何度も金属バットで殴って、殴って、
 
彼女に向かって、最後のトドメのつもりで血だらけの金属バットを振り下ろそうとしたその瞬間―――
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
温かい手が、俺に向かって伸ばされた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「大丈夫だよ、圭一くん……私を信じて―――」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
こんな絶望的な状況で、死ぬ間際、彼女は笑顔で俺に言った。
 
 
 
頭をバットから守るとか、逃げるとか、叫ぶとか、他にやる事があったはずなのに……
レナは、俺を止めようとしてくれた。
 
狂った俺を、受け止めようとしたんだ………
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
俺は、レナの事が好きだった。
 
 
彼女の優しさが、好きだった。
 
 
 
 
 
彼女の笑顔が、大好きだった ―――………
 
 
 
 
 
 
 
 
動かなくなったレナ。もう、2度と話す事も動く事もない。死んだんだ。俺が、殺したんだ。
 
 
カラン、と金属バットが床に落ちる。
そして、涙も、目からとめどなく溢れた。俺は罪を犯しました。大切な人を殺しました。
この手で、何度も、金属バットで殴りました。
 
 
俺を信じて最後の最後まで、俺を救ってくれようとした……
 
 
 
 
大好きだった人を殺しました。
 
 
 
 
 
 
 
 
「…レナ……魅音…………」
 
 
 
 
 
 
 
 
一番悪いのは誰だ?
 
レナか?魅音か?それとも、オヤシロ様か?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
それとも、俺か?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
気がついた時には、もう遅かった。全てが血に染まっていた。
違う世界で、俺は2人を殺しました。
あの2人にはどうやっても償えません。謝れません。……許されません。
 
だから、今の俺に出来ること。もう、俺は2度と同じ過ちは繰り返さない。絶対に!!
 
 
 
 
 
「レナは俺が止める………」
 
 
 
 
 
あの時の俺と同じ想いで苦しんでいるレナを、今度は俺が止めてみせる。
 
 
 
『私を信じて……』
 
 
 
あぁ、信じてやるさ。
世界中の全ての人が、レナを否定しても、俺だけはレナを信じてやる。
世界中の全ての人が、レナを拒絶しても、俺だけはレナを受け入れてやる!!
 
 
 
だから、レナ………
 
 
 
 
 
 
頼むから、俺のことを信じてくれ
 
 
 
 
 
 
レナの苦しみは、痛いほど分かってる。全て受け止めてやる。理由?そんなの簡単だ。
 
 
 
…俺はただ、もう1度レナの笑顔が見たいだけだから。
 
 
 
 
 
 
 




 

 
>>あとがき
 
初ひぐらしで、この話を…(苦笑
でも書いてて本当に楽しかった!鬼隠し編と罪滅ぼし編のお話。まったく知らない人には、さっぱり意味が理解出来ない話ですが……。
 
鬼隠し編でおかしくなっていた圭一、罪滅ぼし編でおかしくなったレナ。
とても切ないお話で、もう2人とも必死なのに、空回りして、最後は惨劇を起こしてしまう。
でも、鬼隠し編で、レナが圭一に殺される間際に「私を信じて」なんて言葉言えたのは、本当に圭一のことを信じていたから。
普通はそんな事出来ませんから……。
逃げるとか叫ぶとか、殺人者を前にして笑顔で手を広げて、「私を信じて」という事が出来たレナは凄い。
…結局、疑心暗鬼の圭一にそのまま殺されてしまう訳ですが…。
 
でも、奇跡だけど、圭一は覚えていて、だからレナを止めたくて…。同じ過ちを繰り返して欲しくない。
かぁ〜!自分圭レナ好きだな、ほんと!!!一発目からこんな話を書いてますが、ほのぼのな圭レナ大好きです。ほんとに!
 
 
では、貴重な時間をこの小説を読むために使ってくださりありがとうございました!!
 
-2008.05.16-
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