今日は本当にいい天気だ
 
こんな日は、彼女を誘って散歩にでも行こう―――
 
 
 
 

 
ほのぼの日和
  
 
 
 
 
 
「はぅ〜!今日は本当に気持ちのいい日だね、圭一くん!」
「だよなぁ、最近雨ばっかりだったろ?だから余計にな」
「こんないい天気の日には、宝探しに行こうかな、かなっ」
「俺も着いてってやろうかー?」
「え、ほんと!?圭一くん」
 
久しぶりの晴れ晴れとした天気。輝く太陽と、雲ひとつない空――
こんな素晴らしい日にも関わらず、部活メンバー達とは予定が噛み合わず、俺とレナだけの部活になった。

俺がレナに何がしたい?と聞くと、レナは笑顔で「宝探し」と言った。そのため、俺とレナはダム工事現場に向かう。
少し寄り道をして、雛見沢の自然を楽しみながら。まるで、ちょっとしたデートみたいだ。
 
 
 
 
「ねぇ…圭一くんは運命って信じる?」
 
「運命?」
 
「うん」
 
「そうだな……俺は信じるぜ!でも、運命ってさ、自分の気持ち次第で変えられると思わねぇか?」
 
「気持ち次第?」
 
「あぁ、たとえこの先どんな苦難が待ち受けていても、自分を…仲間を信じていれば、きっと乗り越えられる。
 たとえ、運命で明日死ぬって決まっていても、足掻いて足掻いて死なないようにすればいいだろ?」
 
「圭一くん………」
 
 
 
人はたくさんの事を経験して、成長していく。
中には間違った事もあるだろう。もしかしたら、取り返しのつかない事もあるかもしれない…
でも、それが運命だって諦めたら、結局俺達は何も変われねぇだろ?
 
 
(…もし、変わらないなら、どうして俺達は生き続ける必要があるんだ?)
 
 
 
 
「何だか勇気が沸いてきた。ありがとう、圭一くん…!」
 
 
 
 
レナ、何か悩み事でもあるのか?何か気になる事があるなら、俺に相談してくれればいいのに。
俺達仲間なんだから……そうか、俺達仲間なんだ。何だこの気持ち。…正直、複雑だ。
 
 
俺がそんな事を頭で巡らしていると、レナが、
 
 
 
 
「レナは、運命には逆らえないと思ってたの。でも…そんな事ないんだよね」
 
「…………っ」
 
 
な、ななな…そ、それは破壊力抜群だぜ、レナ!!
そんな可愛い笑顔で微笑まれたら……やべ、すげードキドキしてきた。落ち着け、俺っ!クールになるんだ前原圭一!!
くそーっ、何でレナはこんなに可愛いんだよっ!
 
 
 
「圭一くん……?」
 
「なっ、なんでもねぇよ!」
 
「はぅ……?変な圭一くん」
 
「へ、変なのはレナの方だろ?何か悩み事があるんなら聞くぜ?」
 
「えっと……あのね、圭一くん……」
 
 
 
頬を赤く染めながら、もじもじと両手を擦り合わせている。その様子がとてつもなく可愛い……!
ドキドキと高鳴る胸を押さえながら、何度か深呼吸。落ち着け……落ち着くんだ、俺。
 
 
 
 
 
「頑張れば、運命は変えられるんだよね?」
 
 
 
「あぁ!きっとな」
 
 
 
 
 
 
 
「じゃぁ………れ、レナも頑張ったら……圭一くんの彼女に…な…なれるかな、かな?」
 
 
 
 
 
 
 
レナの衝撃的な言葉に、俺は顔を真っ赤にさせ、口を鯉のようにパクパクさせたまま硬直してしまった。
レナはレナで、自分の言った言葉の重大さに気づき、真っ赤だった顔が更に赤くなり、そのまま俯いてしまう。
 
 
な、なななな何ですと!?
レナが、今俺の目の前に居る竜宮レナが、俺の彼女に!?
 
 
これは夢か!?それとも現実か!?オヤシロ様の奇跡か!?
この際そんな事どうでもいい!でも…………オヤシロ様、ありがとう――――!
 
 
これは千載一遇のチャンスだ!
今を逃したら、またいつこんなチャンスが巡ってくるか分からない…いや、2度と来ないかもしれない。
 
チャンスは掴み取るものだ!そうだ、男前原圭一!!
 
 
 
 
「レナ…実は俺も……ずっと前から……っ!」
 
「はぅ〜!かあいいなぁ、このレンガ…お持ち帰りぃ〜!」
 
「レ………」
 
「ねぇ、圭一くんもそう思うでしょ!?」
 
「…………はい。そう思います」
 
 
 
かあいいモードのレナには何を言っても聞こえない。
が、ちょ、そのレンガは人ん家の壁……っと言おうとしたが、寸前のところで言葉を飲み込んだ。
 
 
 
(ま、レナが気に入ってるんだからいっか――――。)
 
 
 
まったく、レナの天然には参るよな…そこがレナらしいって言ったら、レナらしいけどさ。
 
 
 
「圭一くん!そろそろ、宝探しに行こうよっ」
 
「あぁ、分かってるよ」
 
 
再び並んで目的地のダム工事現場を目指す―――。
その時、ふと手が触れ合った。
 
俺は、唇を噛み締めて、少し心を落ち着かせると、ぎゅっとレナの手を握る。
その瞬間、レナは俺の方を見た。が、俺は顔を合わさない。……恥ずかしくて合わせられないというのが正しいのだが。
 
 
 
「圭一くん……?」
 
 
「れ、レナが迷子になったら困るからなっ」
 
 
「うん―――!」
 
 
 
俺よりも雛見沢の生活が長いレナが迷子になるはずないのだが―――。
でも、レナの満面の笑顔を見たら、何だか心があったかくなった。
 
 
運命ってのは、昔から決まっている訳じゃない。運命ってのは自分達の手で作っていくものだろ?
 
 
そう、自分の運命は自分で決めるんだ 。
 
 
 
 
 
勇気を出して良かった。今日がこんなにいい天気で良かった。レナと一緒に居られて良かった。
 
 
そして、
 
 
 
 
(君を好きになって本当に、良かった ――――。)
 
 
 
 
 
 
 
 
 




>>あとがき
 
圭レナ2作目!これこそ圭レナっ……ほのぼの一直線を目指しました。
最初は「運命」を引っ掛けて、永遠の愛を誓う2人を書くつもりだったんですが、途中からシリアスっぽくなっちゃって出来ませんでした(苦笑
 
「井戸の中の蛙には、外の世界は分からない」(by梨花)
 
…です。運命を変える事は出来ないけど、それを本人達は分からない。
だから、この小説の圭一達は、運命は自分の手で変えられると思っているんです。それを設定の前提として書いてます。
変えられない事に、本人達は気づいていない。
 
ですが、今回は本当に惨劇とか関係ないです。
ひぐらしを知っている人には、惨劇も絡んでそうな言い回しになってしまってますが、本当に関係ないです。
レナの悩み事は、圭一のことなので。(罪滅ぼし編のではない)
仲間である圭一を好きになってしまったレナは、仲間で居続ける事を運命だと思ってる。
だから、運命を捻じ曲げて「彼女」になる事が出来るか迷ってるという事です。
…ここに書かなくちゃ分からないって、ほんと駄目駄目だ!!!
 
色々台詞気に入ってます。やっぱり圭レナはいいなぁ―――っ!
 
では、貴重な時間をこの小説を読むために使用してくださって、ありがとうございました☆
 
-2008.05.19-
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