雨のち曇りのち晴れ
 
 
 
 
 
 
あ、雨が降って来た……
 
雨の日はお外で遊べないから少しだけ残念。
でも、雨は嫌いじゃない。雨の音は好き。目を閉じて、雨の音を聞くと何だかとても安心できるから……
 
 
 
「レナ……レナっ!」
「はぅ……?」
「もう授業終わったぜ?…全然、授業聞いてなかっただろ?」
「えへへ…後で教えてくれると嬉しいな、圭一くん」
「しょうがねぇーな」
 
 
 
今日は雨だから、家に帰るまで傘をささなくちゃいけない。
傘を開く時の音も好き。傘を広げた時の爽快感とか、傘に当たる雨の音も大好き。どうしてかな、かな?
 
分からないけど、だから雨の日は嫌いじゃない。
 
 
 
「レナ、今日は何だかご機嫌だなー?」
「そうかな、かな?」
「あぁ、なんだかさっきからウキウキしてるぜ…あ、分かった。今晩の夕飯のこと考えてただろー?」
「ち、違うもんっ!」
「あはは…」
 
 
 
雨が好きなのはレナだけなのかな?心の中に浮かんだ1つの疑問。
 
 
 
 
 
「圭一くんは雨、好き?」
 
 
「あぁ、大好きだ!」
 
 
「えっ……?」
 
 
 
 
 
圭一くんから、はっきりと『大好き』っという返事が返って来る事は結構意外で、
てっきり『嫌い』だと思っていたから。
 
雨の日は色々と厄介だ。この村にコンクリートの道路など存在しない。
全て土と砂利の道路のため、雨が降れば地面がぬかるみ家に帰った時には靴がドロドロになってしまう。
 
それに、古い家とか結構多いから、雨漏りも日常茶飯事。
魅ぃちゃん家はとっても大変みたい。梨花ちゃんも、最近神社の雨漏りが酷いって言ってたし……
まぁ、圭一くんの家はまだ新しいから、雨漏りなんてしないんだろうけど。
 
 
 
 
「何驚いてるんだよ!俺が雨好きだったら何かおかしいのか?」
 
「そ、そんな事ないよっ!ただちょっと意外だなーって……」
 
「まぁ、レナには分かんねぇかも知れねぇな!俺の気持ちは」
 
「圭一くんの気持ち……?」
 
 
 
 
そんな言い方をされると少し期待してしまうのが乙女心。しかし………
 
 
 
 
「何ていっても雨が降れば振るほど、服が濡れて透ける可能性が高くなる。それを見るのも妄想するのも、楽しみの一つだが、
 なんと言っても少し濡れた髪だろ、やっぱ!断然っ、服よりも髪!これはかなり男心のツボをつくぜっ!」
 
 
 
「……………。」
 
 
 
少しでも期待したレナが馬鹿だった…と心の中で呟いていると、
圭一くんは大笑いしながらレナの頭をぽんぽんと優しく叩いた。それが心地よくて、ちょっと照れくさくて、思わず頬が赤に染まる。
 
 
「ま、今のは冗談だけどな」
 
「嘘…絶対本気だったもんっ」
 
「へへ…でも、雨が好きなのは本当だぜ」
 
「本当かな、かな?」
 
 
少し疑い気味のレナを前にして、圭一はにかっと笑って見せる。
 
 
 
 
 
「よく分かんねぇけど……多分、俺は雨の音が好きなんだと思う」
 
 
 
 
その瞬間、レナは少し俯いたまま圭一に分からないように笑った。
そうか…彼も雨の音が好きなのか。
一緒だね、私も雨の音が好き。とっても好き。……大好き。
 
 
 
「信じてないだろー?」
 
「信じてるよ」
 
「本当か?」
 
「うん。だって、レナも好きだから…雨の音」
 
「そうか」
 
 
 
はぅ……もうちょっとでいつもの分かれ道に着いちゃう。
もっとたくさん圭一くんとお話したいのに、もっと、一緒に居たいのに………
 
 
そう思うのは私の我侭かな?
1日が過ぎるたびに好きになる。一緒に居るだけで、胸がドキドキする。
 
きっと、恋とはこんなものなのかもしれない。だから、こんなに幸せになれる……
 
 
 
 
 
 
「圭一くんは、レナの事好き?」
 
 
「なっ…何言ってんだよ!!当たり前だろっ!」
 
 
「ほんとに………?」
 
 
「本当だ。す、す、好きだぞ…レナ……」
 
 
 
 
 
圭一くんは珍しく照れたように顔を真っ赤にしている。
恥ずかしくてしょうがないのか、傘で顔を隠してしまった。そんな様子を見て、私はくすくすと笑う。
 
傘に雨が当たってポツポツと音を立てるのも、
木々にたまった雨が一気に落ちてきて、傘に当たる音も、
塗れた地面を歩いている音も、泥が跳ねる音もみんな好き。あと、隣に圭一くんが居るから…私……
 
 
 
 
 
 
そんな事を思っていると、段々と耳に届いていた心地よい音が少なくなってきた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「……………あれ?」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ポツ、ポツ……ポツ……。…………。……音が、止んだ…………?
 
 
 
 
 
 
 
「雨止んだなぁ……」
 
「止んじゃったね……」
 
「何だよ、嬉しくないのか?」
 
「レナは雨好きだもん。圭一くんも好きって言ったのに……」
 
「あぁ、大好きだぜ」
 
「だったらどうして……?」
 
 
 
 
圭一くんは傘を閉じると、まだ傘を差したままの私の頭を撫でた。
 
 
「ほら、雨止んだぜ?もう傘は必要ねぇだろ?」
 
「う、うん………」
 
 
私は言われるがままに傘を閉じると、その瞬間圭一くんに抱きしめられた。
驚いて小さな悲鳴をあげたが、彼はそんなの気にも止めない。顔は見えないけど、おそらく今の圭一くんは満面の笑顔だ。
 
 
 
「雨のときは…さ」
 
 
「えっ?」
 
 
「傘が邪魔で、こうやって抱きしめられないだろ……?」
 
 
「………っ!!」
 
 
 
耳元でそう囁かれると顔がゆでだこみたいに真っ赤になってしまう。
悔しいなぁ…圭一くんにいつもからかわれてばかり。でも、そんな圭一くんが好きなんだからしょうがないよね。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ははっ!あと、俺は確かに雨が好きだと言ったが、晴れが嫌いとは言ってないぜ?」
 
 
 
 
 
「むぅ……ずるい……っ」
 
 
 
 
 
 
 
雨のち曇りのち晴れ。
 
雲の間から指す太陽は、何故かいつもよりも輝いて見えていた。
 
 
 
 
 
 
 
 




>>あとがき
 
ほのぼの目指し見事に玉砕!圭レナはこんな可愛らしい毎日を送って欲しい、と願って止まない。
私は雨好きです。家の中で外を眺めておくのが好き…。
外に出るなんてそんな事は絶対しませんが(笑
 
レナは何となく雨好きだと思う。
圭一は雨も曇りも晴れも好きだと思う。
 
そう思いながら書いたのがこれでした!
文才の限界をひしひしと感じながら……次も頑張ろう!(まだやる気か)
あ、あと「雨のち曇りのち晴れ」って絶対に話と合ってないんですが、語呂がよかったのでこうしました(爆 
 
では、貴重な時間を割いてまでこんな小説読んでくださり、本当にありがとうございました!!
 
-2008.06.05-
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