「好きだよ、詩音」
 
「悟史くん…………」
 
 
 
詩音と悟史の唇が重なり――――
 
詩音は目が覚めた。………そう、今までのことは、全て夢だったのだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
Please Kiss Me!
 
 
 
 
 
 
 
 
「はぁ………」
「どうしたの?詩音、朝からそんな深いため息ついて」
「実は、悟史くんとキスしたんです」
「ええっ!?」
「でも、夢だったんです」
「あっそ……」
「お姉、私と悟史くんがキスする方法って何かないですかねぇ?」
「ないだろ、それは」
「ですよねー」
 
 
 
 
 
トボトボとそのまま学校に向かう。
すると、前から圭ちゃんとレナさんが駆け寄ってきた。
 
 
「おはよー魅ぃちゃん!詩ぃちゃん!」
「お、詩音が居るって珍しいじゃん!」
「あぁ、おはよーですぅ…今日ちょっと…はぁ……」
「詩ぃちゃん、どうしたの?何か悲しいことでもあった…?」
「実は、悟史くんとキスしたんです」
「マジかよ!?」
「でも、夢だったんです…はぁ」
「夢かよ!!」
「あ、そうなんだ…残念だったね…」
「もう、詩音ったら朝からこんな感じでさ〜…まいっちゃうよねぇ」
 
 
お姉がなんと言おうと、私は今日の夢が忘れられないんです。
だって、夢だけど、悟史くんの顔があんなに近くに………あの夢が現実だったらいいのに、
 
 
 
 
 
「あぁ、神さま仏様オヤシロ様!どうか、私と悟史くんがキスできますように……っ!」
 
 
 
 
「あぅ、ボクに出来るならしてあげたいのです……」
「あ、朝から何を言ってますの?詩音さん……」
「みー…朝から詩ぃは元気なのです」
「え"?」
「詩音ーもう学校着いたからねぇ」←魅音
「さ、沙都子と梨花ちゃま!?って事は……もしかして……っ」
 
 
おそるおそる辺りを見渡すと、やっぱり
 
 
「むぅ。お、おはよう……詩音…」
「悟史くん!?」
「今日も元気だね…あはは…」
「あ…えと、まだちょっと寝ぼけてて…その……っ、し、しし失礼します!!!」
 
 
ボッと顔が沸騰したように熱くなり、そのままその場から全力疾走で逃げる。
最悪……っ、まさかあんな独り言を悟史くんに聞かれるなんて!!
もう何なのよ…あんな夢は見るし…いや、夢はいいんだけど。むしろラッキーっていうか、でも結局は夢だから。
 
天国から地獄に一気に叩き落された気がして……えと、とにかくどうしよう!??
 
 
 
「どうしよう、お姉!?」
「んな事言われてもねぇ……」
 
とりあえず今度は悟史くんに聞かれない所で、お姉に泣きつく。
 
「あぁ、もう!どうして学校に着いたこと教えてくれないんですか!悟史くんの前で余計な恥かいちゃいましたっ!」
「いや、これはどう考えたって詩音のミスでしょ!?」
「こうなったら夢を現実にするしか、他に手はありませんねぇ……」
「なんで!?」

その瞬間、勢いよく扉が開いて、

「詩音!!!」
「圭ちゃん!?」
「俺はいい方法を思いついたぜ…!」
「あの、圭ちゃん?ここ女子トイレなんだけど………」
 
 
 
 
「俺達には部活ってものがあるじゃねぇか!
 悟史を最下位にして、罰ゲームで詩音にキスさせればいいんだっ!!もちろん、俺達が協力するっ」
 
 
 
 
「な、なるほど!それ良い考えじゃんっ…ね、詩音?」
「あの、私とキスをするのが罰ゲームなんですか………?」
「……………。」
「……………。」
「「細かいことは気にするなっ!!」」
「…気にしますよ」
「なるほど、今日の部活は詩音に圭一と魅音が味方するのですね!
これは梨花に教えてあげるです〜!」
 
 
 
多少納得はできないものの、とりあえず今はそれしか手がない。
今日は私が部活で勝つ!!
そう、どんな手を使っても……悟史くん、悪いけど今日は負けてもらうからね、覚悟して。
 
 
 
 
 
 
 
 
園崎詩音……今日は本気でいきます!!!
 
 
 
 
 
 
 
 
「また負けたぁ――ッ!!」
「今日のにーにーは一体どうしましたの……」
「みー…強すぎなのです…」
「こりゃおじさんも困ったねぇ」
「悟史くんの1人勝ちだよ…だよ」
 
今日は何故か悟史は絶好調らしく、連戦連勝。
既に圭一、沙都子、梨花、魅音、レナは悟史に破れ罰ゲームをさせられる羽目になっている。
ちなみに圭一は白鳥ドレスに身を包み、沙都子はメイド服、梨花は体操服、魅音はスクール水着、レナは猫ミミである。
(※罰ゲームの内容は悟史が決めた訳ではない。)
 
 
「むぅ、何だか悪いなぁ」
「だったら私に負けてください!!この園崎詩音に……っ!」
「むぅ……」
「絶対に負けませんからねっ!」
「詩音、部活で手加減は駄目だよ。はい、僕の勝ち」
「……………っ」
 
 
 
 
 
 
ま、負けた…………
 
 
 
 
 
 
「じゃぁ、詩音も罰ゲーム決……」
「うぅ……っ、うわぁああんっ…!」
「詩音!?」
「し、詩ぃちゃん………」
「にーにーが泣かせましたわ…」
「悟史が泣かせたです…」
「僕が!?」
「悟史が泣かせたですよ……」
 
 
急に泣き出した詩音に慌てた悟史は、困ったように優しく頭を撫でる。
そして、事情を知っている圭一と魅音はお互い顔を見合わせ、苦笑しながらため息をついた。
 
 
 
「詩音…僕が悪かったから、泣き止んで?ね?」
「うぅ…だってぇ……っ」
「むぅ…分かった、こうしよう!詩音も僕の罰ゲーム受けて、僕も詩音の罰ゲーム受けるから…」
「ほ、本当ですか!?」
「むぅ、本当だよ」
 
 
 
 
 
「じゃぁ、私にキスしてください!!!」
 
 
 
 
 
ちょ、直球―――っ!?
 
 
「ちょ、ちょっと…!詩音、それはいくらなんでも直球すぎじゃ…」
「そうですわよ!っていうかそれ罰ゲームなんですの!?」
「みー………」
「ははは、詩音、中々ヤるじゃねぇか……」
 
 
 
悟史はもちろん戸惑う。だが、詩音は真剣だ。大真面目だ。
目に涙を溜めて、じっと悟史を見つめている。懸命に訴えるその瞳に負けたのか、悟史は……
 
 
 
 
「むぅ、僕が罰ゲーム受けたらもう泣かない?」
 
「泣かない!」
 
「約束だからね?」
 
「え…って事は、もしかして……」
 
「うん、詩音にキスすればいいんだよね?」
 
 
 
 
 
 
神さま仏様オヤシロ様、
 
夢を現実にしてくれてありがと―――ッ!!!
 
 
 
 
 
 
「えっ…ここですんのか!?」
「はぅ…2人とも赤くなってかぁいいよ…」
「レナ!頼むから今は落ち着いてよ!(ここで邪魔したら後が怖いし……)」
「ちょっ………は、破廉恥ですわ!!」
「にぱー☆久しぶりに面白いもんが見れそうなのです」
「あぅあぅあぅ〜〜!!」
 
 
 
 
 
 
「じゃぁ…目を閉じて」
 
 
「はい……」
 
 
 
 
悟史の言うとおり素直に目を閉じる詩音。詩音の肩に、悟史の手がそっと置かれる。
 
そんな様子を見守る部活メンバー……
沙都子と魅音は恥ずかしさで目を手で覆っているが、指と指の間からしっかりと様子を見守っている。
レナはかぁいいモード寸前、圭一はレナを押さえ込みつつ、梨花は無表情である。
羽入は、顔をキムチを食べた時のように真っ赤にして、
あぅあぅしながら圭一達の周りをぐるぐると回っている。
 
 
 
 
「詩音………」
 
 
 
 
私のファーストキス……
悟史くんが相手で良かった。
何度も夢見たことが、ついに現実に………っ、あぁ…オヤシロ様ありがとう!
 
私、生まれてきて、良かった………
 
 
 
 
 
詩音の予想した感触が唇に来ることはなかった。
しかし、代わりにおでこに温かくて柔らかい感触……詩音が状況を把握した時には、
 
 
 
 
「はい、おしまい。」
 
 
 
 
そう言って、悟史は真っ赤な顔の詩音の頭を優しく撫でる。
 
 
 
 
 
「キスっておでこにかよ……」
「にぱー☆悟史は恋愛には疎いのです」
「わ、わたくしは最初からこうなることは予想していましたのよ…!」
「嘘だよね、沙都子ちゃん」
「うっ……」
「あぅあぅ、心臓が持たないのですよ……」
 
 
 
 
悟史が詩音の頭から手を離そうとした時、詩音は真っ赤な顔のまま、ぎゅっと悟史の服の袖を掴んだ。
 
 
「…どうしたの?」
 
「あ………」
 
「うん?」
 
 
 
 
「ありがと、悟史くん……っ」
 
 
 
 
その言葉に、悟史もかあぁぁっと顔が赤くなる。
それを見ていた部活メンバー達も赤面し、何だかとてもよそよそしい。
 
 
 
 
「あはは、まぁ…一件落着だな」
「そうだよね!あはは、詩音も良かったじゃんー!」
「…………っ」
「沙都子はヤキモチ妬いちゃったのですか?」
「ち、ちちち違いますわよ!!どうしてわたくしが詩音さんにヤキモチ妬かなくちゃいけないんですの!?」
「にぱー☆意地張らなくていいのですよ?」
「〜〜〜っ、梨花の意地悪っ!」
 
 
 
 
その後、詩音は他のメンバーが受けた罰ゲームを全てさせられたという。
それでも詩音は幸せそうだったのです、あぅあぅ♡
 
 
 
 
 
 
 
 
 



>>あとがき
 
皆本当に好きだなぁ、と思う今日この頃(何
ひぐらしのキャラって今更ですけど、みんな大好きです!
だから、皆を巻き込んだ小説を書きたいなぁと思って書いたらこんな感じに…うん、本望です(笑
 
まぁ、“何処に”キスをするかって指定してませんからねーvv
私としてはそのまま唇でもいいんですけど、悟史だったらこうするかなーと思ったのでこうしました。
是非とも今度は2人きりのときに(笑
こんな詩音→悟史な、友達以上恋人未満な2人に現在萌えてます!!
 
では、ここまで貴重な時間を使って読んでくださってありがとうございました☆
 
 
※ちなみに、この小説には羽入もこっそりと登場してます。
  羽入の台詞などは反転してます。もし暇でしょうがない時は、探してみて下さいvv(笑
 
-2008.08.17-
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