生きたい、君と一緒に生きたいと思った
どんなに残酷な世界だとしても、
どう足掻いても過去は消せないとしても、

 
 
それでも、僕は生きてるから…………
 
精一杯、生きようと思った。







折れた翼で、空を
 
 
 
 




「…詩音は、僕の事が怖くないの?」
「怖くありませんよ」
「むぅ、流石園崎家次期頭首の妹だね。中々図太い神経してるよ」
「それって誉め言葉ですか?そうじゃなくても、誉め言葉として受け取らせて頂きますけど」
 
 
 
僕は取り戻した。
最愛の人を守るため、自分の手を血に染めてまで、取り戻したかった日々を。
 
…取り戻すまで、随分と時間は経ってしまったけど。
 
 
「…悟史くんは、今何を考えているんですか?」
「人を、殺した時の感触だよ」
「えっ………?」
 
 
そう、僕は罪を犯してしまった。
 
一生消せない、消えない、押し潰されそうなほど大きくて重い、罪を。
 
 
 
 
 
 
 
 
「今、詩音の目の前に居るのは…紛れもなく殺人鬼だよ………?」
 
 
 
 
 
 
 
 
僕は人を殺した。
人を、バットで何度も頭が凹むぐらい殴り続けた。
最愛の人を守るために。……だから?それが一体何の言い訳になる?
 
人を殺しておいて、自分を正当化?最悪だね。人の風上にもおけない。
 
 
たまに振り返る過去……誰が悪かったんだろう。
どうしてあんな事になったんだろう。
どこをどうすれば、あんな悲劇は起こらなかったんだろう。
 
 
今更考えたってあの頃に戻れないのは分かってる……でも、考えずにはいられない。
 
 
 
 
 
 
(どうして、僕はここに居るんだろう………?)
 
 
 
 
 
 
 
「…………。」
 
「……詩音?」
 
「この世界は嫌いですか………?」
 
「えっ……?」
 
 
 
この世界は、とても幸せに満ち溢れていて、
だからこそ、穢れた自分と釣り合わない…………
 
 
皆が幸せになれる世界だから、もう何も思い悩む必要などない、だけど……
 
 
 
 
 
 
 
 
(人を殺してしまった僕が、幸せになってもいいのだろうか……?)
 
 
 
 
 
 
 
 
「分からないよ…」
 
 
「私は、この世界が好きです。だって、悟史くんが帰って来てくれた……それだけで、私は幸せ。」
 
 
人を殺すという事。
私は人を殺した事がないはず。…ないはずなのに、たまに頭を過ぎるこの記憶は何だろう。
悟史くんへの想いが暴走して、鬼に心を喰われた。
そして、たくさんの人を殺してしまった、
 
 
 
 
 
……この悲しい記憶は、一体何?
 
 
 
 
 
「私、ここじゃない世界で…とんでもない罪を犯した気がするんです……」
「ここじゃない世界……?」
「はい、私にもよく分かりません…でも、たくさんの人を殺した気がする………悟史くんを待てずに」
「この世界では、僕のことを待っててくれたじゃないか……」
「はい…だから、私は幸せになれたんだと思うんです」
 
 
 
きっと、選択を間違えなかったから……
 
 
 
「…僕も、幸せになれる?」
「なれますよ、絶対に」
「…こんな僕でも……」
「ストップ」
 
 
 
 
詩音は僕の顔を見ながら微笑んだ。
 
 
 
 
 
 
「誰にでも幸せになれる権利があります………私も、悟史くんも、この空の下に居る人みんなが」
 
 
 
 
 
 
この空の下に、どれだけの人が居るんだろう。
 
今、どれだけの人がこの空を眺めているのだろう……
 
 
 
 
繋がる絆、想い、温かな光……
生きている人は全て、幸せになれる権利がある。
 
 
幸せを手に出来るかどうか、それは自分次第で、たとえ間違っても何処かで直せばいい。
どこかで、正せばいい。そうしなければ、私達が生き続ける意味なんてないのだから………
 
 
 
 
 
 
「ありがとう……詩音」
 
 
 
 
 
深い深い眠りの中、誰かが僕の名前を呼んでいた。
 
最初は、どうして僕を呼んでいるのか分からなかった。
でも、耳を塞ぐ事は出来ず、その声に聞き入った。しばらくすると、その声が僕の救いに……
 
 
 
あたたかかったよ、とても。
 
 
 
闇の中で、詩音の声だけが、僕には救いだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
僕は取り返しのつかない罪を犯してしまった。
何度も迷って、何度も諦めて、何度も決意して、自分だけで解決しようと決めた時、僕に鬼が宿った。
 
 
後悔しているのかな。
 
あんなに迷って出した結論だったのに………
 
 
 
ただ、僕は愛する人を守りたかった、それだけ、だったのに――――
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
僕の翼は折れてしまった
 
空は、もう2度と飛べない
 
 
 
でも、もう1度飛びたい………
 
 
 
 
 
折れた翼で、足掻きながら、苦しみながらも、幸せを手にするために、この空を………
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
>>あとがき
 
何が書きたかったのかさっぱりわかりません\(^o^)/
 
ひぐらしの名言の1つだと思うんですが、「誰にでも幸せになれる権利がある」
私はそのとおりだと思うんですよね。今貴方は幸せですか?と聞かれたら何人の人がYesと答えるのか。
そして、どのラインからが幸せになるのか。不幸になるのか。
 
まぁ、それは人それぞれ違う訳で……少なくとも、私は幸せです。
毎日上手く行かない事とか、イライラする事とかたくさんあるけど、今ここで生きていられている事に感謝しています。
生きていないとそんな体験も出来ない訳ですし。
 
まったくトラブルの無い人生もありえない!
全ては試練だと思い立ち向かっていくか、目をそむけるしかない。
人生とはそんな試行錯誤の繰り返しの中で、幸せを見つける物語だと思うんですよね…ひぐらしと同じだ。
 
全然あとがきからずれてますが…(脱線しすぎ)
ここまで貴重な時間を割いて、読んでくださってありがとうございました☆
 
-2008.08.18-
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