たった1つの言葉さえ、たった1つの想いさえ
 
満足に伝えられなくて……








の た め に 、 小 さ な 約 束 を
 
 
 
 
 
 
 
 
「詩音、詩音ってば………!」
 
「へっ?」
 
悟史くんに名前を呼ばれ、私は何とも情けない返事を返す。
私は今教室に居る。そして、隣には悟史くんが……。実は、幸運なことに2人きりなんですよ。
 
 
他の皆は何をしているかというと、外で体育の真っ最中。悟史くんはまだ全快じゃないから、体育は参加出来ない。
もちろん、私はサボり。理由?そんなの悟史くんと一緒に居たいからに決まってるじゃないですか!
 
 
「むぅ、詩音僕の話聞いてた?」
「えっと…もう1度お願いします!」
「やっぱり聞いてなかったんだ…」
「ご、ゴメンなさい〜!」
 
 
 
「僕ね、運動が出来るようになったらまた野球しようと思うんだ!」
 
 
 
「それいいですね!」
「だからさ……」
 
悟史は少しだけ恥ずかしそうに視線を落として、
 
 
 
 
 
 
「また、試合の応援に来てくれないかな……?」
 
 
 
 
 
 
彼の頬が赤く染まっているのは気のせいだろうか。
 
 
 
悟史くんが、また野球をしたい、と言ってくれたことは嬉しかった。
彼はここ1番で打てはしなかったものの、一生懸命練習に打ち込むし、センス的には悪くない。
 
何よりも、私と初めて出会った頃の彼に戻りかけていることが、嬉しくて堪らなかった……
 
 
 
「………詩音?」
 
「あ、ゴメンなさい…ちょっと思い出してて……」
 
 
 
あなたとの思い出は、いつまで経っても色あせないから―――
 
 
 
 
 
 
 
「もちろん、行きます…差し入れもたくさん持って、応援用の旗とかも作りますね!!」
 
 
 
 
 
 
 
「むぅ、旗はいらない…かな」
 
 
 
 
そう言って困ったように笑う。
本当に、貴方の事、これ以上好きになれないくらい好きなんです。
 
もどかしい…伝わらなくて、伝えられなくて。
こんなに好きなのに、こんなに想ってるのに…悟史くんの事を、ずっとずっと前から……
 
 
 
 
「………詩音?」
 
 
 
 
気がついたら涙が出てきた。
やっと実感が沸いてきたのかな…悟史くんが居るってことを。
 
 
 
「ごめんなさい…涙が勝手に………っ、
 差し入れ…持って行きますね…たくさん、たくさん…何が食べたいですか?私、頑張りますから…」
 
「詩音………」
 
「サンドイッチがいいですかねぇ…前、持って行った時…喜んでくれたから…っ」
 
「ありがとう……」
 
 
 
泣いてる私の頭を、悟史くんが優しく撫でてくれる。
あぁ、あたたかいよ……悟史くんがまた頭を撫でてくれるって信じていたから、私ここまで待てたんだよ。
悟史くんが私の想いを受け入れてくれなくてもいいの。
 
 
ただ、昔の悟史くんが戻ってきてくれたら、それだけで嬉しいから……
 
 
 
 
 
「詩音のために、僕いつかホームラン打つよ」
 
 
 
 
 
だから、泣かないで――――――。
 
 
 
 
「…私の、ために?」
「うん、詩音のために」
「本当ですか?約束してくれます?」
「もちろん!頑張って練習して…絶対に打つよ」
「…大丈夫ですか、そんな事言って」
 
 
 
 
「じゃぁ、指きりしようか?」
 
 
 
 
「…………っ」
 
 
「僕、約束は絶対に守るから。……詩音が、守ってくれたように」
 
 
 
差し出された小指に、自分の小指を絡める。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「絶対…っ、約束ですからね!」
 
 
「分かってる」
 
 
「もし無理だったら、エンジェルモートのコスプレさせますからね…っ」
 
 
「はは、分かったよ」
 
 
「…あと、悟史くんを私専用の抱き枕にしますからねっ!」
 
 
「む、むぅ………」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
悟史くんはまた約束してくれた
 
 
私と悟史くん、2人だけの約束………
 
 
 
 
だから、もう大丈夫………
 
 
 
 
 
 
 
これからも、小さな約束をたくさん積み重ねて
 
 
 
一緒に生きていこう?
 
今までの遅れた時間を、2人で取り戻すように―――――
 
 
 
 
 
 
 
 
 



>>あとがき
 
2人とも本当に大好き!
悟史は元気になったら、また野球するといい!!っていうか、野球のユニホームが似合いすぎです。
愛しいです。愛してます(煩い)
 
また、詩音も応援に行って、今度は部活メンバー全員で行くといい!
沙都子も詩音と一緒になって大声で叫んで応援したり、旗とか作ったりしたらいい!
そんな日…絶対に来ますよね。
みんなが幸せになりますように!
 
にしてもうちの詩音はよく泣きますねぇ…(苦笑
まぁ、それだけ悟史が大好きだという事で!
 
では、ここまで貴重な時間を使って読んで頂きありがとうございました☆
 
-2008.08.24-

 

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