天使の微笑みを
 
 
 
 
 
 
 

もし、この世に絶対に許されない罪があるとしたら、それは何だと思う?
 
 
学校のガラスを全て叩き割り、バットで人を殴ることか?……違う。
貸してもらっていた名前を、そいつから奪うことか?……違う。
泣き叫び頼り甘えて、大好きな人を追い詰めることか?……違う。
何も出来ず変えられず、何度も同じことを繰り返すことか?……違う。
 
 
………人を殺すことか?―――――違う……っ!!!!


「圭一くん」
「レナ………」
「大丈夫、レナが居るよ」
「………っ」
 
 
 
 
 
 
仲間を、信じないことだ ――――。
 
 
 
 
 
 
大切な仲間を信じられないこと。それは、絶対に許されない罪だ。
でも、誰でも簡単にふとした拍子に崩れてしまう。
仲間とは何だ?誰が仲間だ?仲間なら、こんなことはしない。じゃぁ、仲間じゃないからするのか?
 
こいつは仲間じゃないのか!?
 
 
 
 
 
誰が仲間で、誰が敵なんだよ………!?
 
 
 
 
 
後ろから、優しく俺を抱き締めてくれるレナ。レナの手に自分の手を重ねて、俺はレナに聞いた。
 
 
「レナ、お前は俺が怖いか……?」
「うぅん」
「どうしてだよ…俺は、きっと……」
「レナは圭一くんが怖いと思ったこと、1度もないよ」
「嘘だ」
「本当だよ」
「嘘だ……ッ!!」
 
 
信じられない。
今のレナは確かにレナだ。でも、いつか豹変して、俺に鉈を振り下ろす………
 
 
 
 
 
 
「圭一くんが、レナを怖いと思ってるんじゃないのかな。……かな」
 
 
 
 
 
 
そう言って、レナは悲しそうに笑った。
 
 
「…レナが怖い?」
「そう。」
「……………。」
「圭一くんはいつも怯えてる…でも、レナには圭一くんが何に怯えているのか分からないの」
「……………。」
 
 
 
 
「私を信じて。私は、圭一くんの敵なんかじゃない……!」
 
 
 
 
「レナ…………」
「私も、圭一くんの事信じてるから」
 
 
 
 
レナは強い。こんなか弱い少女の姿で、俺なんかよりもずっとずっと強い。
どうしてレナはこんなに強いんだろう。
どうしてこんなに強く居られるんだろう。
 
 
 
 
 
「圭一くんのこと、信じてるよ……」
 
 
 
 
 
俺は振り返って、レナを力強く抱き締めた。
なぁ、レナ。お前だけは信じても大丈夫なんだよな?裏切ったりしないよな?
ずっとずっと、お前だけは傍に居てくれるんだろ?
 
レナだけは……レナだけは、俺のこと、ずっと、信じてくれるんだな?
 
 
 
 
「レナ………」
 
「大丈夫、1人じゃないよ」
 
「あぁ、そうだな……」
 
「レナも居る、みんなも居る…みんな、圭一くんの味方だよ?」
 
「ありがとう……っ」
 
 
 
 
この先、この世界じゃない何処かで、俺はレナに手をかけるかもしれない。
それが一番怖いんだ。
仲間を疑って、1人疑心暗鬼になって、レナや皆を殺してしまうことが怖くて恐ろしい。
 
誰1人、罪を犯していない人間なんて居ない。
罪の大きさに関らず、人はみんな誰かを傷つけて苦しめて、生きている……
 
 
「なぁ、レナは罪を犯すことが怖いか……?」
 
「怖くないよ」
 
 
レナが怖いのは、そんな事じゃない。
 
 
 
 
 
「レナが怖いのは、オヤシロ様の祟りに合うことでも、家族がバラバラになることでもないよ」
 
 
 
 
 
オヤシロ様の祟りも、家族がバラバラになることも怖いけど、
 
でも、それ以上の恐怖を知っているから………
 
 
 
 
 
 
「仲間を、信じられなくなることが、1番怖いよ…………っ」
 
 
 
 
 
 
どうして怖いのか、どうして恐ろしいのか、分からないの。
仲間をどうして疑っちゃうのか、信じられなくなっちゃうのか、分かんない………
 
 
でも、絶対に後悔しちゃうから。
後悔して泣いても叫んでも、相手に ごめんなさい って謝れない方が、絶対に絶対に苦しいから……
 
 
 
 
 
 
「………レナ、」
 
 
 
 
 
そっと、彼女に口付けた。
 
 
怖い、よな。
 
 
 
この温かさがなくなってしまうこと。
 
この優しさがなくなってしまうこと。
 
 
 
 
 
 
 
 
この世で絶対に許されない罪って何だと思う?
 
 
 
そんなもの、存在してないんだ。
 
 
 
 
 
許されない罪なんてない。
 
自分自身が、許されないと思い込んでいるだけなんだ。
 
 
「好きだ、レナ……だから、」
 
 
 
 
(だから、俺は君を壊してしまう事が怖いんだ。)
 
 
 
 
 
 
 
 




>>あとがき
 
圭レナ好きだーっ!タイトルがあんまり関係ないっぽいですけど、圭一にはレナが天使に見えたんですよ!
うん、そういう事にしておいてくださいませ…。
 
この話は、これ!っていうお話ではなくて、
何処かの遠い世界で、圭一は鬼隠し編、レナは罪滅ぼし編の自分を、今の自分と重ねているんです。
 
どうしてこんな事を考えてしまうのか分からない。
何故、こんなに胸が引き裂かれるように痛いのかも分からない。
2人にはその時の記憶がないから、分からない。気づかない。
 
そういう感じで書いてみたのですが…どうなんですかねぇ。個人的にはこういう2人好きなんですが。
罪滅ぼし編の圭一は奇跡を起こした。
きっと、他の世界の自分の罪に気づく事はないけれど、多分皆心のどこかでかすかに覚えている。
何処か遠い日に見た夢だと思っている。
 
そんな感じだといいなーです。
 
では、微妙な圭レナですが、ここまで読んでくださってありがとうございましたvv
 
-2008.08.30-
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