ひたすら純粋だった少女の恋は、
いつの間にか惨劇へと繋がってしまっていた事に……少女が気づいたのは、最期の時だった ―――。
限 り な く 惨 劇 に 近 い 恋 ご こ ろ
ご近所さんに引っ越してきた同級生の男の子・前原圭一くん。
私は彼に淡い恋心を抱いていた。でも、特別な何かを望んでいた訳ではない。
ただ、この当たり前の日々が、ずっと続けば良いと思っていた。
「圭一くーん！おっはよーう！」
圭一くんが親戚の葬儀で雛見沢を離れたのは、約２日。
久しぶりに見た彼に、特に変わった様子はなく、いつものように輝いて見えた。
「慌てて来たのかな？…かな？」
躓きそうになりながら走ってきた彼にそう声をかける。
こうやって一緒に登下校できる事が嬉しい。
魅ぃちゃんと３人でおしゃべりする事も楽しい。
学校で、沙都子ちゃんと梨花ちゃんも一緒に、５人で部活をすることも面白い。
毎日が幸せだった。
何処から歯車が狂い始めたのか、私にも圭一くんにも、きっと誰にも分からなかった。
(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい――――……)
放課後、圭一くんに雛見沢を案内する事にした。
まだ転校したてでよく村を知らないと思ったから。小さな村だし、すぐに回れちゃう。
最後に訪れたダム工事現場。
レナが宝探しをしている時に、しばらく圭一くんが富竹さんとお話しているのがちらっと見えた。
…何の話してるんだろ、だろ？
「なぁ、レナ…さっきのゴミ山…あそこで何かあったのか？」
「ダムの工事をやってたんだって。詳しくは知らないけど……」
「例えばさ 工事中に何かあったとか…事故とか…事件とか………」
う〜ん……レナ、ダム事件の事あまりよく知らないんだよね。
魅ぃちゃん達から少し聞いたことあるくらいで……どうしよう？しゃべって、変に怖がらせちゃうのもあれだし……
「知らない。実はね、レナも去年までよそに住んでたの」
「え…レナも転校生だったのか？」
「だからね、それ以前のことはよく知らないの。ごめんね☆」
今、惨劇へと続く道を１歩大きく前に踏み出した。
(ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい――――……)
「圭一くん………」
圭一くんの様子が変だ。１人で登校するようになった、朝バットで素振りをするようになった。
まるで、あの時の悟史くんと同じように………
圭一くんも、“転校”しちゃうの？
嫌だよ、嫌…………
「だから、圭一くんはレナが助けてあげる……っ！」
私は悟史くんに何もしてあげられなかった。
転校しちゃってから後悔しても、遅いよね……レナがもっと相談にのってあげられていたら。
悟史くんは、きっと“転校”しなかった。
レナのせいだ……レナがもっと、
圭一くんは、レナが絶対に助けるよっ！
絶対に、絶対に助けるから。だって……………
「もう人が転校するところは、見たくないもの………」
悟史くんが転校してしまった後の、絶望感………レナはもう２度と味わいたくないの。
私は、圭一くんの味方だよ。
困っている事があるなら、心配事があるなら、私に相談して………？
ねぇ、圭一くんは一体何が怖いの？
何に怯えているの？
ね、レナに教えて……………？
あぁ、そうか………
やっと分かったよ。圭一くんが何に怯えていたのか、何が怖かったのか。
「圭一くん………」
ごめんね、ごめんね……気づいてあげられなかった。
こんなに追い詰められるまで……私は気づいてあげられなかったんだね。
あはは、また、悟史くんの時と同じ過ちを繰り返しちゃった。
「レナね、圭一くんの事………」
好きだったんだよ。
ずっと、ずっと。
お願い、元の圭一くんに戻って………
レナ、今度こそ間違えないから。ごめんね、本当にごめんね………
圭一くんが怖かったのは、怯えていたのは『レナ』だったんだね―――――。
「大丈夫だよ、圭一くん………」
私は、貴方を見捨てない。
私は、どんなに拒絶されても、何度だって、貴方に手を差し伸べるよ。
私は、圭一くんの事を信じてる。
圭一くんは何も悪くない、悪いのはレナだった………
ただ、私は圭一くんに早く元気になって欲しかったの。ただ、それだけだったんだよ……？
私は、圭一くんの事が大好き。
圭一くんのこと、全部全部許すよ。だから、もう１度だけ笑って………？
「私を信じて」
ただ、当たり前の日常が続けば良かった。
ただ、圭一くんが笑っていてくれれば良かったのに……
「＊ ＊ ＊ ＊ ＊ ッ！！！！」
(砕かれたのは、限りなく惨劇に近い、儚く切ない少女の恋心だった ―――。)
>>あとがき
鬼隠し好きです…かなり好き！
最初はただ怖いだけだったんですが、罪滅ぼし編を見たら、鬼隠しがどれだけ重要で、
どれだけ切なくて悲しい物語なのかよく分かります。
切なくて、やりきれない……
でも、鬼隠しは誰も悪くないんですよね。誰も悪くないのに………
にしても、圭ちゃんが悟史と自分を重ねるのには萌えた(こいつ!!!
だって、何度も何度も圭ちゃんが、悟史、悟史言うんだもん！これが萌えない訳がないっ
っていうか、物凄く書くの難しかったです。
圭レナは大好きだ！鬼隠しでの圭レナが一番好きかもしれません。
初々しくて大好き！
ここまで貴重な時間を使って読んでくださり、ありがとうございました☆
-2008.09.20-
