心地よい風と、温かな日差し。
どうしてこんなに気持ちがいいんだろう……あぁ、そうか。
 
それは、悟史くんが隣に居るからだね……
 
 
 
 
 
 
 
風と陽だまりと、君と
 
 
 
 
 
 
 
特に何をする訳でもなく、私と悟史くんは木陰でのんびりとしていた。
暑くも無く寒くも無い。木陰の中はちょうどいい気温で、ゆらゆらと揺れる葉っぱや、肌に当たる風が心地よかった。
最高の昼寝日和、と言ってもいい。
 
 
「悟史くん………?」
 
 
悟史くんがここに居たい、と言ったから私もここに居る。
悟史くんは木陰に入るが否や、そのまま横になって。私は、彼の隣に腰を下ろした。
 
 
あぁ、今日も空が青いなぁ……
 
 
そう衝突に思って、私はずっと空を眺めていた。
しばらく経って、視線を下に落とすと、悟史くんは軽く寝息をたてている。
 
 
 
「眠っちゃったんですか……?」
 
 
 
こんな可愛い女の子を残してよく寝ていられますね。
と、小言を呟いてみるが嫌な気はしなかった。
これは隣で安心して寝られるくらい、悟史くんが私に心を許している証拠だから。むしろ嬉しかった。
こうやって悟史くんの傍に居る。
それは、私にとっては何度も夢見た、幸せ。
 
 
風によって、さらさらと揺れる金髪の髪。
手を伸ばして、彼の髪に触れてみる。優しくて、軽くて、ふわふわしてて、触っているだけで心地よい。
 
 

「悟史くん」
 
 

返事がないのは分かっているが、名前を呼ぶ。もう1度。
 
 

「…悟史くん」
 
 

今は返事を返してくれないけど、目が覚めたらきっと、「どうしたの?」って言ってくれる。
きっと笑顔で微笑んでくれる。貴方が目覚めてから、早いようでもう1年が経ちました。
それから、悟史くんはずっと私と一緒に居てくれた。
私の気持ちに気づいているのか、いないのか、それはわからないけど……とにかく、彼は私と一緒に居てくれたのだ。
 
 
一緒にお買い物に行ったり、一緒に食事を取ったり、一緒に部活をしたり……
沙都子と梨花ちゃんも一緒に4人でハイキングに行ったこともあった。
したい事はたくさんあったから。でも、今もしたい事は尽きなくて。むしろ、どんどん膨らんで。
 
 
 
 
 
1年経って、貴方が居ない恐怖が、だいぶ薄らいだ。
 
もう何処にも行かない。
ずっと、ここに居る。
 
悟史くんは、そうやって“約束”してくれたから………
 
 
 
それでも、たまに怖くなる時がある。
そういう時は悟史くんに手を握ってもらったり、頭を撫でてもらう。
そうすれば、大丈夫。安心、するの。
 
 
 
「悟史くん……」
 
 
 
今、貴方の世界はどうですか。幸せな世界ですか?
悟史くんの手をぎゅっと握った。
もう、ひとりぼっちじゃないですよ、と言いたくて。伝えたくて。
 
 

「…………しおん?」
 
「あっ、ごめんなさい…起こしちゃいました?」
 
「ん、温かいね…」
 
「えっ?」
 
「詩音の、手」
 
 

まだ寝惚けているのだろうか。でも、私の手を、悟史くんは握り返してくれた。
悟史くんは優しく微笑みながら、私に向かってボソボソと何かを言う。
でも、ちょうどその時、強い風が吹いて、悟史くんの小さな声が掻き消されてしまい……。
 
 

「あっ……悟史くん!も、もう1度……っ」
 
「ん………」
 
「…悟史くん?」
 
「すー……」
 
 

悟史くんはまた夢の中にいってしまったようだ。
私は少しだけ肩を落として、彼の手を握ったまま彼の横に寝転がった。
 
 
 


(悟史くんの声、聞き逃しちゃうなんてな―――……)
 
 
 


そんな事をおぼろげに考えながら、悟史くんに近づいてみる。
……悟史くんは、私の事どう思ってるんだろう。
いつも一緒に居てくれるし、
沙都子も応援してくれているし、
……少なくとも、嫌われてはいないと思う。
 
でも、恋愛感情として好かれている自信は、ない。
最近よく暴走するしなー
うん、もうちょっと落ち着いて、大人しい女の子になるように気をつけよう。
 
 
 
「もう、悟史くんの寝顔可愛いなぁ……天使みたい。きゅんきゅん☆」
 
 
 
本当に、ただ見ているだけで笑顔になっちゃうんだよ。私は、悟史くんの寝顔を見ながら、
たまに頬を指でつついてみた。ピクッと反応する悟史くんが可愛くて、自然と笑みがこぼれる。
 
ちょっと意地悪がしたくなって、悟史くんの鼻をつまんでみた。
最初は特に何も反応がなかったけど、しばらく経つと苦しくなったのか、うーんうーんと唸っている。
もう、本当に可愛すぎです………!
 
 
 
「もう、ずっとずっと一緒ですよね……」
 
 
 
いつ終わるか分からない日常。
もしかしたら、明日火山が噴火して雛見沢が死んでしまうかもしれない。
もしかしたら、宇宙から来た宇宙人によって、地球が滅ぼされてしまうかもしれない。
 

貴方が、ある日突然居なくなってしまうかも、しれない……

 
当たり前の日々が、当たり前じゃなくなる。
それはとても寂しく辛い事で、とても怖い事。
私は知ってるから…だから、今の幸せ、1秒1秒を大切にするよ。この1秒1秒が、私の宝物。
 
 
 
「……ね、悟史くん」
 
 
 
そうやって、彼の手と一緒に、自分の手を空に掲げてぶらぶらと動かす。
ここに居るって、確かめたくて。
彼の手を握って、動かして、貴方が隣に居ると感じたくて………
 
 
 
「あ……きゃっ!」
 
 
 
悟史くんにぐいっと手を引かれて、私はそのまま彼の胸に飛び込んでしまった。
顔が、かあぁぁっと赤くなる。
やっと思考が安定してきて、悟史くんから慌てて離れようとした時には既に遅し。
悟史くんの手はしっかりと私の背に回されていた。
 
本音としては、このまま彼の腕の中に収まって居たいのだが、
彼が起きた時、この状況は色々とまずい気がした。
私は彼の事が大好きだが、彼は私の事を好きだと言ったことは一度もない。
 
悟史くんが起きて、「むぅ…」で終わればいいのだが、逆に気まずくなったら困る。物凄く困る!
 
 
 
「うぅ…悟史くん、離してくださぁい……っ」
 
 
 
ごそごそと動いてみるが、まったく離す気配がない。
悟史くんのこの力って、一体何処から出てくるの!?
 
あまり派手に動くと悟史くんが起きてしまう。
色々頑張ってみるものの、このままでは抜け出せそうに無い。 
 
 
 
「………ん」
 
 
 
 
不意に悟史くんの声が聞こえて、ドキリとした。
もぞもぞと顔を上げると、悟史くんはまだ眠っているみたい。ホッとしたのもつかの間……
 
 
 
 
 
「しおん、大好きだよ……」
 
 
 
 
 
聞き間違いかと思った。自分の妄想かと耳を疑った。
だって、そんな、そんなまさか………っ、でも、確かに聞こえたのだ。
 
 
「……ず、ずるいよ、悟史くん……っ」
 
 
ちゃんと起きてる時に言ってくれればいいのに。
寝てるなんてずるすぎです。
 
でも、許してあげます。
 
だから、もうちょっとだけ……………
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
もう少しだけ、この温かさの中で………
 
 
 
「詩音………」
 
 
 
私は、頭を撫でられる心地よい感触で目を覚ました。そこには悟史くんが居て、
 
彼は眩しいほどの笑顔で、私に向かって微笑みかけていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
>>あとがき
 
飽きないなサトシオン。何にも考えずただサトシオンを書こう!と思って書いたのがこれ。
詩音ほったらかして寝ちゃう悟史とか、寝ている悟史にちょっかいをかける詩音が書きたかったらしいです。
 
最後の方、悟史くん起きてます。寝惚けてます←
無意識でやっちゃう所が、悟史の魅力…!(天然攻め萌える!にーにー!!)
 
 
っという訳で↓おまけ(反転)
 
 
「…………むぅ!?」(←起きた)
 
な、何で僕詩音を抱き締めて寝てるんだろう……
でも…詩音気持ち良さそうに寝てるし、起こすのは可哀想だよね。
 
そーっと詩音を離して、それからはずっと悟史は詩音の頭を撫でてました。

あーもうサトシオン好き過ぎる!
これからもこの2人の幸せな日常を書いていきたいと思いますっ!それが私の幸せ(笑
 
では、ここまで貴重な時間を使って読んでくださってありがとうございました…!
 
-2008.10.18-
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