「にーにー!起きてくださいませっ」

朝、眩しい日差しと、すずめの声。そして、沙都子の声で僕は目を覚ました。







空 に 咲 い た ひ ま わ り
  
 
 
 
 
 

うっすらと目を開けると、沙都子が僕を起こそうと身体を揺すっている。
 
 
「ん……さと、こ?」
「早く起きないと、学校に遅刻してしまいますわよっ!」
「うん…あと5分……」
「あと5分も寝てたら大遅刻ですわ!すぐに起きて顔を洗ってきてくださいませ!」
「むぅ………」
 
沙都子はしっかり者だ。
僕が寝すぎたら起こしてくれるし、朝食の用意もしてくれる。
生活力が無い僕にとっては本当にありがたい。僕もそろそろ見習わないとなぁ……うん。
 
 
 
 
 
重い腰をあげ、僕は洗面所で歯磨きをしていた。すると、後ろから沙都子が顔を出して、
 
 
「にーにー、何か洗濯物とかありましたら今のうちに出しておいて貰えませんこと?」
「洗濯物………?」
「今日はいいお天気ですから…絶好の洗濯日和なんですの」
「ん、分かったよ。でも、帰ってからでもよくないかい?」
「帰った頃には、もうお日様は沈んでいますわよ」
「あ、そっか……」
「あと、朝食も早く食べちゃってくださいませね」
 
 
沙都子は既に洗濯機に放り込んでいた洗濯物を籠の中に入れて、
そのまま外へ洗濯物を干しに行く。
朝、学校に行く前に洗濯物やら朝食やら……沙都子は本当にしっかりしてる。
 
 
 
「ごちそうさま」
「お粗末様ですわ」
「美味しかったよ、いつもありがとう」
「い、妹として当然ですわ!」
 
 
僕は、感謝の気持ちを込めて沙都子の頭を撫でた。
 
それから戸締りをきちんとして、沙都子と一緒に学校に登校する。
さぁ、今日もまた楽しい日になるといいな。
何して遊ぼうかな。詩音は、今日も来るかな。
 
 
 
「にーにー、ご機嫌ですわね?」
「そう?」
「えぇ、とっても楽しそうですわ」
「うん、楽しいよ!毎日が楽しくて、幸せだよ」
「にーにー……!」
 
 
にーにーが幸せなら、わたくしも幸せですわ。
今までたくさん苦労をかけてしまいましたもの……成長したわたくしを見て欲しい。
そして、たくさん褒めて欲しい。だから、毎日毎日頑張っているの、にーにーは気づいていますかしら?
 
 
 
 
学校につくと、いつもと何かが違っていた。
静かなのである。
まだ、みんなは来ていないのだろうか……?
 
 
校内に入ろうと思って、ドアに手をかける。……………開かない。
 
 
 
 
「………むぅ?」
 
「どうかしましたの?にーにー…」
 
「開かない、んだけど……あれ?」
 
 
その時、沙都子が何かを思い出したように、
 
 
 
 
 
 
「あっ!…今日は、開校記念日でお休みでしたわ」
 
 
 
 
 
 
僕と沙都子は顔を見合わせると、そのまま吹き出した。
開校記念日で休校か!
兄妹揃ってそのことを忘れていて、のこのこと学校まで来たのがとてもおかしくて、
2人ともしばらくの間大笑いしてた。
 
 
「にーにー!ぷっ……学校が休みなら休みと言って下さいませ!」
「むぅ…沙都子だって忘れてたじゃないか!」
「わ、わたくしは色々と朝は忙しいんですの!」
「ぼ、僕だって……えっと…………むぅ」
「にーにーのせいですからねっ」
「いやいや、お互い様だよ!あははは!」
 
 
結局僕達は、せっかく来たのだから、とりあえず学校周辺を散歩して家に戻る事にした。
雛見沢の朝は、空気は美味しいし、景色は綺麗で、とても静か。
耳に届くひぐらしの鳴き声で、もうすぐ夏なんだなと実感する。
 
 
 
「にーにー!見てくださいませっ」
「あ、凄いなー」
「もうすぐ咲きそうですわね…!」
「うん、もうすぐだね」
 
 
僕達が見つけたのはとてもとても大きなひまわり。
このひまわりは、僕の身長ぐらいあるから、沙都子は首が痛くなるほど見上げなくちゃいけない。
 
 
「大きいですわ…!」
「うん、大きいね」
「にーにーはずるいですわねぇ」
「えっ?」
「わたくしは見上げなくちゃいけませんのに、にーにーは同じぐらいの高さなんですもの」
 
 
沙都子のその言葉を聞いて、そうだ……!っと僕は閃いた。
 
 
「沙都子っ!」
「きゃっ…!な、何なんですの!?」
「ほら、こうやったら見えるでしょ?」
「………っ」
 
僕は、沙都子を抱き上げて風車をした。
これなら、沙都子は首痛くならない。そう思ってした事だったのだが……
 
 
「にーにー…、見上げなくても良くなりましたけど、今度は見下げなくちゃいけなくて、
どっちにしても首が痛いですわ」
 
「むぅ………ごめん……。」
 
 
にーにーは、本当に申し訳なさそうにそう言って、
わたくしを地面に下ろそうとしましたの。
 
 
「下ろさなくていいですわ!」
 
「えっ?」
 
「せっかくですから、このまま家まで送り届けてくださりませんこと?」
 
 
せっかくですもの。小さい頃から、こうやって風車してもらう事が好きだった。
昔からにーにーはいつも優しくて、温かくて……。
久々の風車。もう少し味わっておきたいですわ……
 
 
 
「落とさないでくださいませよ?」
 
 
「んー…沙都子、少し重くなった?」
 
 
「なっ……!ちょ、年頃のレディーに向かってなんて口の聞き方するんですの!?」
 
 
「むぅ……ごめんごめん」
 
 
「訂正してくださいませ!まったく、にーにーにはデリカシーというものが欠けてますわねぇ」
 
 
「あはは………」
 
 
 
にーにー、帰って来てくれてありがとう。
わたくしとっても幸せですわ。
大切な仲間たちと、そして大好きなにーにー。
 
全ての幸せが、揃った。もう、苦しみも痛みもない。あるのは、幸せだけ。
 
 
 
 
「にーにー……」
 
「ん?」
 
「夏になったら、さっきのひまわりを、また一緒に見に行きませんこと?」
 
「いいよ、綺麗に咲くといいね」
 
「咲きますわよ、絶対っ!」
 
 
 
 
にーにーとひまわりって何だか似てる気がしますわ。
髪の色が同じ、とかじゃないんですのよ。それだったらわたくしも一緒でしょう。
なんていうか、にーにーは太陽のように温かくて優しくて、まっすぐで…………
 
 
なんて、そんなのわたくしの自惚れかもしれませんわね。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
わたくしのにーにーは、頼りなくて容量が悪くて、生活力なんて皆無ですけど、
 
でも、とても優しい人。
 
 
 
「にーにー、見て!空がとても青いですわ……」
 
「あ、本当だね」
 
 
 
今、空で輝いている太陽のように、とても温かいんですの。


 
 
 
 
 
 
 
 
 
>>あとがき
 
北条兄妹が書きたかった…!この兄妹本当に萌えるっ!
ヤバイなぁ、素で大好きです。幸せになってもらいたいので、幸せな風景を書いてみた……!
 
沙都子は、にーにーに頑張ってる姿を見せたくて毎日頑張ってるといい!
そして、悟史に褒めてもらえればいいです。
兄妹揃って何処か抜けてて、でもとっても仲良しで、たくさんたくさん笑って欲しいです!
 
この小説では梨花ちゃんは一緒に暮らしていない模様ー
悟史と沙都子は北条家で、梨花ちゃんと羽入は古手神社で暮らしてるという設定。
理由は、梨花ちゃんが居たら、開校記念日で休みなの気づくから…!(それだけ)
 
あーもう、この兄妹大好きです。
では、ここまで貴重な時間を使って読んでくださってありがとうございました!
 
-2008.11.04-
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