ヒ ト カ ケ ラ
 
 
 
 
 
 
 
また1つ、悲劇が終わりを告げた。
雛見沢は平和だ。きっと、もう悲劇は起こらないから。でも、たとえ起こったとしても大丈夫。
 
 
諦めない強さを、みんなが持っているから―――
 
 
 
 
 
 
 
 
「にぱー☆」
 
「り、梨花ちゃん?」
 
「悟史1人では心細いと思いましたので、ボクも買い物について行くのです」
 
「あ、ありがとう…」
 
 
北条悟史は変わらなかった。
たくさんの悲劇を繰り返した世界の悟史と、今ここに居る悟史は同じ。
長い眠りから覚めて、平和な時を共有するようになっても、悟史は変わらない。
 
 
 
 
 
長い長い時の流れ―――
 
 
みんな成長した。変わった。沙都子だって、詩音だって、レナだって、圭一だって、私だって………
一番成長したのは私。だからこそ分かる。
悟史は、何も変わっていないことに。
 
 
悟史は、普段は穏やかでとても優しい人。
頑張り屋で、何でも自分1人で抱え込んでしまう。とても、とても温かい人。
 
 
 
「悟史は変わらないのですね」
 
「えっ?」
 
「沙都子はたくさん変わっていたでしょう?」
 
「………うん」
 
 
 
悟史はとても嬉しそうに、笑った。
 
100年の旅の中で、悟史のこんな笑顔を見たのは容易に数えられる程度……
悲しみも苦しみもない、悟史の本当の笑顔を見たのは。
(旅が終わりに近づけば近づくほど、悟史の居た昭和57年とはかけ離れていくから。)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
悟史は、最初から私達に助けを求めていた。
 
 
悟史の失踪後、叔父の鉄平が帰ってきた時、
沙都子はみんなに心配をかけないように、叔父から受ける虐待を隠していた。
他の世界のレナも、圭一も、詩音も、魅音も、誰も私達に助けを求めなかった。
 
 
1人で抱え込んで、みんな雛見沢症候群を発症し、あの血なまぐさい惨劇に繋がっていたのだ。
 
 
 
 
あの世界で圭一とレナが見せてくれた奇跡。
仲間に相談するという事。
たったこれだけの事を、私達はしなかったのだ。その答えにたどり着くまで、私達は100年もかかってしまった。
 
 
 
 
 
でも、悟史は最初からその答えに辿り着いていた ―――。
 
 
 
 
 
「ボクは、悟史は凄いと思うのです」
 
 
 
でも、私達は貴方を助けてあげられなかったけど――――。
(圭一のように、運命を正面からぶち壊す勇気が、無かったから)
 
 
 
 
 
 
 
 
「梨花ちゃん……僕は最低な人間だよ」
「悟史………」
「沙都子に悲しい思いはさせるし、詩音にはいっぱい迷惑かけるし、みんなにも……」
「そ、そんなこと……っ」
「でも、だからこそ僕はみんなに恩返しがしたい。」
 
 
 
 
 
 
 
 
沙都子には悲しい思いや、辛い思いをたくさんさせてしまった。
だから、これからはたくさん甘えさせてあげたいし、我侭だって、たくさん聞いてあげたい。
 
 
詩音にもたくさん迷惑をかけてしまった。
眠っている間の僕の世話はもちろん、沙都子の相手や、目覚めた後の事も……
だから、僕に出来ることを、精一杯やりたいんだ。
 
 
 
みんな、僕を待ってくれていた。
 
だから、言葉に出来ないほど、たくさんの“ありがとう”を―――
 
 
 
 
 
「梨花ちゃん、ありがとう。」
 
 
 
 
 
あぁ、悟史は強いのね。
貴方を救えなくてごめんなさい。何度も何度も貴方を救えなかった私に、“ありがとう”だなんて。
 
 
貴方は助けを求めていたのに。
助けて、あげられなかった。
助けたかったのに。
助けてあげられなかった。
 
 
ごめんなさい…………。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「悟史は、今幸せですか?」
 
 
 
 
 
「うん、幸せだよ」
 
 
 
 
 
その後、悟史がボソリと言った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
僕も、やっと幸せになれたんだ…………
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
そうか、悟史も気づいていたんだ。
みんなと同じ。他の世界があることに。
悟史も感じていたんだ。
みんなと同じ。他の世界に溢れていた罪に。
 
 
 
 
 
悟史も、他の世界から受け取ったカケラの記憶を胸に、今を生きているのね………
 
 
 
 
 
 
 
 
「悟史……僕は、そんな優しい悟史が大好きなのですよ」
 
 
 
 
 
 
 
 
貴方の優しさは、刃物のように鋭い。
 
その優しさが誰かを傷つける。
沙都子や詩音のようにその傷が膿んで広がって、その痛みに泣いて……
 
 
貴方の優しさは、温かい。
 
その温かさが誰かを救う。
沙都子や詩音のように、私の、ように………
 
 
 
 
 
 
 
貴方は幸せになるために生まれてきた。
 
みんなを幸せにするために生まれてきた。
 
 
 
 
 
貴方が私にくれたのは、全てを赦し包み込む優しさのカケラ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
>>あとがき
 
悟史と梨花ちゃんって絶対仲良しだったと思う…!(断定)
梨花ちゃんにとっても、悟史はにーにーになればいいです。沙都子と一緒に遊んでいればいいんです。
 
悟史って最初からレナとかに相談してたんだよね。
罪滅ぼし編で皆言ってたけど、誰も助けなかった。助けられなかったの方が正しいんだろうけど。
最初から答えに辿り着いていた悟史を、どうにか救う事が出来なかったのかなって。
もちろん、悟史の経験があるからこそみんな今度こそ、と思うんでしょうけど、どうなのかなって…。
悟史が好きだからこそ、悲しいです。今でも、悟史が叔母を殺す前になんとか出来なかったのかって、思っちゃうんですよ…。

(ずっと寝てたんですから成長も何もないんですが、)悟史は本質的には何も変わらないと思う。
いや、変わるところは変わってると思います。
目覚めた後は、目覚める前よりも断然強くなると思う。
心の支えが出来ると思うから。沙都子も詩音も、皆も笑って出迎えてくれるでしょうし。
 
あぁ、もう自分で書いててよく意味が分かりません…(苦笑
とにかく2人は仲良しさんだということで(←結論)
 
では、ここまで貴重な時間を使って読んでくださってありがとうございました☆
 
-2009.01.27-
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