僕は、君の事が好きなのかもしれない………。
恋 が 花 開 く ま で
目が覚めてから、ずっと傍に居てくれた少女。
何かしら僕の世話を妬いてくれて、毎日のように診療所に通い、暇を持て余す僕の相手をしてくれた。
退院した後も、何かと理由をつけては僕の傍に居てくれる。
(むぅ……僕、詩音の事が好きなのかもしれない。)
声を聞くと心臓が跳ね上がる。触れられるとその箇所が熱くなる。
詩音が圭一と話していると落ち着かない。詩音が笑うと僕も笑う。気がついたら、いつも詩音を目で追ってて…。
(でも、どうすればいいのか、分からない……。)
恋なんてした事ないし、そして誰にも相談出来ない、し……むぅ、どうしよう……。
それに、何だか胸が苦しいんだ。どうしたら治るんだろう。詩音のこと考えると、胸が痛い………。
「さーとーしー……くんっ!」
「う、うわぁあ!」
「だ、大丈夫ですか!?」
「いたた……大丈…夫……」
いきなり詩音に話しかけられたことに驚いて、僕は座っていた椅子から転げ落ちてしまった。
凄くカッコ悪い……。そう思いながら、倒れた椅子を元に戻して座りなおす。
詩音はというと、僕の様子を見てくすくすと笑っていた。
「もう、何やってるんですか!」
「むぅ…ちょっと考え事してて…」
「考え事…?悩み事ですか?」
「う、うん……まぁ、そんなところかな……」
「悟史くんの悩み事……沙都子がお嫁に行く時どうしよう、とか?」
「む、むぅ………違うよっ!!」
「あはは、冗談ですよっ!そうだ、私で良ければ相談に乗ります!私、悟史くんの力になりたいんです…っ」
ええぇぇぇ――――?
むぅ……相談に乗ってくれるのはありがたいんだけど、凄く凄くありがたいんだけど、
僕が詩音のこと好きかどうかで悩んでいるのに……それを本人に言うのはちょっと……。
でも、本当にどうなんだろう。
僕、今凄くドキドキしてる。
そう…詩音と話していると胸がドキドキするんだ。
沙都子や魅音と話している時は、ドキドキしない。やっぱり、僕は君のこと――――。
「………悟史くん?」
「えっ?えと……」
「もう、さっきから本当に変ですよ!」
「そ、そうだね……はは……」
「悟史くん…私じゃ、力になれませんか……?」
「そ、そんな事ないよ!」
詩音が悲しそうにしゅん、と俯く。
慌てて否定してみたものの、これからどうしよう……詩音に正直に……
いやいや、それはやっぱり……。
(本当に好きなら、こんな形じゃなくてちゃんと伝えたい。)
「詩音、あのね……詳細は言いたくないんだ。
でも、全然嫌な悩みじゃなくて…えっと、その………どっちかというと、心が温かくなる悩みなんだよ。
それで、答えが見つからないって言うか、どうすればいいのか戸惑ってる感じなんだ……」
「……………?」
「むぅ……何て言えばいいのかな……」
「つまり、悟史くんは明確な答えを探しているんですね!」
詩音が好きなのか、それとも違うのか。
「そ、そうだよ……!!」
「明確な答えを探さなくても良いと思います!」
「………………………えっ?」
僕は答えが欲しいのに、詩音は探さなくてもいいと言う。
むぅ……どうしてだよ。早く答えが知りたい。そして、答えが分かったなら僕は君にこのキモチを伝えたい。
モヤモヤとして、居心地が悪いこのキモチから、早く抜け出したい。
「白黒はっきりつける必要はないって事です。それに、急がなくてもいいじゃありませんか」
急ぐ必要はない。焦る必要もない。
ゆっくりでいい。そんなに急いで答えを追い求めるよりも、ずっしり構えて待ってみませんか?
走ってばかりじゃ疲れちゃいます。
だから、少しだけ足を止めて、広い視野で周りを見渡してみる。
そうすればきっと、答えは自ずと見つかります!
(それに、今の悟史くんには、いっぱい悩めるほど、たくさんの時間があるじゃないですか……)
「植物と一緒ですよ…!」
「植物……?」
「ほら、早く花を咲かせたいからと言って、たくさん水をあげすぎたら逆効果でしょう?」
「うん………」
「だから、少し余裕を持った方がいいと思います」
「…そうだね。僕、少し焦りすぎてたかもしれない……」
詩音って、やっぱり温かいな……。
ただ傍に居てくれるだけで、心が温かくなる。ドキドキする。
このキモチに、まだ明確な答えは出せていないけど。
「詩音、ありがとうっ!」
椅子から立ち上がり、感謝の気持ちを込めて詩音の頭を撫でた。
……あ、よく考えてみれば頭を撫でるっていうのは、止めた方がいいのかな。
そろそろ女の子の頭を気安く撫でる癖、何とかしなくちゃって思ってたし………。
えと…でも、詩音は正直どう思ってるんだろう。
「ひゃぁ……ど、どどどう致しまして!」
「むぅ………あの、さ」
「は、はい?」
「詩音は、頭撫でられるの嫌?」
唐突な質問に、今まで頬を染めてあたふたしていた詩音が急に動きを止めた。
きょとん、とした顔でしばらく僕の顔を見つめていたけれど、急に視線を落としてボソリと呟いた。
「……い、嫌じゃないです」
「本当に?」
「嘘付きませんよ!」
「………じゃぁ、好き?」
「えっ!?…………………です」
「えっ?」
よく聞こえない、と言おうとすると、詩音は顔を真っ赤にさせて、そのまま僕の前から走り去ろうとする。
詩音は教室から出るドアの前で1度足を止めて、僕に向かって叫んだ。
「悟史くんに頭撫でられるの……っ、大好きですっ!!!」
そのまま教室を飛び出してしまった詩音を見送って、僕は笑った。
そっか。詩音は頭撫でられるの、好きなんだ。
うん、やっぱり可愛いな。
いつか、恋が花開くまで
(ゆっくり育てていこう。まだ蕾だけど、いつか綺麗な花を咲かせるために。)
>>あとがき
「何々ー?誰が何を好きだってぇ?」(by圭一) ※教室なので皆居ました。
サトシオンほのぼの……!何だかすっごく久々に書いた気がします<ほのぼの
いつも詩音→悟史ばっかりなので、たまには逆を書こう!っという事で、悟史→詩音を目指しました。
テーマは悩む悟史きゅん。
どんどん悩めばいいと思います!
悟史くんは結構根が真面目なので、悩んで悩んでから、詩音のことが好きだと気づけばいいです。
(そして、詩音のアピールにことごとく気づかなければいいです。萌え…!)
こんな小説書いてますけど、私は白黒はっきりつけるタイプです。
↑は理想です。理想はあくまで理想。私は恋の花が咲くのをじっくり待つのではなく、温室でも何処にでも入れて急激に育てる派です(ダメじゃん)
ま、悟史くんには花が咲くのをじっくり待ってくれればいいと思いますvv(笑
では、ここまで貴重な時間を割いてくださり、ありがとうございましたー!
-2009.02.11-