僕の世界は真っ暗だった
いつからここにいたのか分からない。

でも、僕はいつの間にかここに居て、ずっと、ひとりぼっちだった ――――。

 
 
 
 
 
 
 
夢 の 終 わ り
 
 
 
 
 
 
目を閉じる。目を開ける。
目を閉じても開けても、僕の目の前に広がるのは闇ばかり。
 
何も見えない。何も聞こえない。
ひとりぼっちの時間に慣れたせいか、僕はどうしてここに居るのか、とか、そういう疑問さえ、考えなくなった。
いや、もしかしたら、もう心なんてないのかもしれない。
 
壊れてしまったのかもしれない。
あの時、叔母さんを壊したように、僕は自分の心も、自分の手で粉々にしてしまったのかも。
 
 
 
 
 
 
分からない。
 
分かりたくない。
 
 
 
もう、何もしたくない。
 
苦しいのも痛いのも、もうたくさんだ。
 
 
 
ここなら、何も聞こえない。
 
沙都子の鳴き声も、叔母の叱責も。
 
 
 
 
 
 
 
ただ、少しだけ寂しかった。
誰かに話しかけて欲しくて、誰かに触れたくて、誰かを抱き締めたくて、誰かに、抱き締められたくて……。
すると、いつからか分からないが僕に誰かがずっと話しかけている。
でも、何を言っているのかイマイチ聞き取れない。
何て言っているんだろう、と耳を澄ませばその声は消えてしまう。
 
 
でも、不快じゃなかった。
僕に敵意がある声ではなく、ただただ優しく語り掛けてくれる、声。
 
 
 
 
 
 
もっと早く、この声が語りかけてくれていれば、
 
僕はここまで堕ちなかったかもしれない。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
夢が、終わる―――――――。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
突然、目の前に沙都子が現れた。
口を強く結んで、俯いているから表情は分からない。
でも、僕は沙都子が泣いているような気がして、慌てて傍に駆けよった。
 
 
「沙都子……?」
 
沙都子は何も答えない。
 
 
「どうしたの?何処か痛むの……?」
 
 
やはり、沙都子は何も答えない。
 
 
 
 
「また、叔母さんに虐められたのかい?」
 
 
 
 
沙都子、お願いだから何か言って。
どうしたの。どうしてそんな悲しそうな顔をしているの?何で、泣いているんだい?
沙都子の泣き顔だけは見たくないんだ。
だから、僕は沙都子の笑顔を守るためだったら何でもするよ。……何でも、したよ。
 
 
「沙都子…………」
 
「にーにー……」
 
「沙都子?」
 
「ごめ…なさい……」
 
 
どうしたの?何があった?ねぇ、沙都子、教えてくれよ……!
沙都子の目からポロポロと大粒の涙が溢れる。
僕はそんな痛々しい沙都子を見ていられなくて、ぎゅっと強く抱きしめた。
 
 
 
 
 
 
 
「大丈夫……僕が守るから。沙都子は、僕が守る……!!」
 
 
 
 
 
 
だから、沙都子は何も心配しなくていいんだよ。
沙都子を泣かせる奴は、苦しめる奴は、誰だって許さない。誰だって壊してやる。沙都子を守る。
何をどうやっても。両手を血に染めてでも、どれだけ涙を流そうとも、どれだけ傷つこうとも、僕が沙都子を守るよ……。
 
 
 
すると、沙都子は首を横に振る。
 
そして、一言だけ僕に向かって言った。
 
 
 
 
(私は、大丈夫…………)
 
 
 
 
えっ…………?
 
 
 
 
(だから、帰って来て―――――――。)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その瞬間、沙都子は光の屑となって弾けた。
僕の腕の中から光の屑が溢れ、そのまま消えていく。
一人に戻りたくなくて、僕は必死にその光の粒を掴もうとする。でも、掴めない。届かない。消えていく。
 
 
最後の光が消えた時、辺りは再び真っ暗になった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
あぁ、また僕は一人になったんだ……
 
寂しい。悲しい。苦しい。
 
 
 
僕は一体何をしていたんだろう……
 
何がしたかたんだろう……
 
 
 
(これから、どうすればいいんだろう―――――。)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
その時、僕に向かって温かい手が伸ばされた。
 
その手を必死に掴む。もうひとりぼっちは、嫌だ…………!!!!
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
目を開けると、そこには光があった。
 
眩しくて、目を開けていられない。
目を細めて必死に辺りを伺っていると、誰かが僕の手を掴んでいる。
 
 
 
「……………?」
 
 
 
重い身体を無理に起こしてみると、そこには緑色の髪をした少女が眠っていた。綺麗――――。
魅音………?………いや、違う。魅音じゃない。
詩音だ。何でそう思うのか理由は分からないが、ここに居るのは詩音だ。そう思った。
 
 
 
はっきりしない頭で、僕は少女の髪に触れる。さらさらしてて、気持ちいい。
そのまま頭を撫でていると、ピクリと少女が動いた。
 
ゆっくりと顔を上げた少女と目が合う。すると、少女の瞳は見る見るうちに大きく見開かれていく。
 
 
 
 
「詩音………」
 
 
「悟史くん………」
 
 
「君が……手を、握ってくれていたの……?」
 
 
 
 
ありがとう。
 
人の手って、こんなに温かかったんだね………。君のおかげで、僕は戻って、来れた。
頬を伝う冷たい涙の感触に気づいて、僕は生きていることを実感したんだ。
 
 
 
 
 
 
 
夢 の 終 わ り
 
(僕は一人ぼっちなんかじゃなかった。だって、こんなにも近くに居てくれたじゃないか。)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
>>あとがき
 
1月のテスト勉強中に思いついて走り書きしたもの。
これを書いた時には、だいぶテストも落ち着いていたので、結構ゆっくり書けました。
久々にゆっくり書けたので、楽しかったです!!
 
悟史が目を覚ます時を書いてみた。
沙都子が、悟史の夢の中で謝る話が書きたかったらしい。
最初は、目覚めた時には沙都子もいて、「ごめんなさい」と謝るのもいいかなっと思ったんですが、
まぁ、それはまた次の機会にしようと思います。やっぱり、目覚めは詩音で…!(笑
私は北条兄妹もサトシオンも、同じくらい大好きなので、楽しかった。悟史は愛されればいい…!
 
では、ここまで貴重な時間を使って読んでくださってありがとうございました☆
 
-2009.02.16-
 
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