ラ イ バ ル に 戦 線 布 告 を 
 
 
 
 
 
 
 
 
「圭一は、誰か好きな子居ないの?」
 

何の前触れも無く、衝突に、悟史が言ったこの一言で、俺は瞬時に凍りついた。
 
「………は?」
「いや、だから…圭一は好きな女の子居ないのかなって……」
「な、なななんだよ、いきなり…!」
 
学校の休憩時間、教室で、突然ふられたこの話題に、俺はどう答えればいいのか分からなかった。
こういう時に限って、普段横で騒いでくれる部活メンバーは………居ない
 
 
 
「むぅ……別にそんなに驚かなくても」
 
「っていうか、そんなの聞いてどうするんだよ!?」
 
「何でそんなに焦ってるの?」
 
「焦ってねぇーよ!!」
 
 
 
否定しつつも、俺の心中は穏やかじゃなかった。
それとは正反対に、悟史はいつもと同様のにこやかな顔で微笑んでいる。
それが妙に勘に触るのだから、今の俺は自分でも変だと思う。
好きな子の話を男友達の間でしても何の不思議もないはずだ。
俺は悟史の事を親友だと思っているし。だけど、この話題は…………衝突過ぎた。
 
まず、悟史とこんな話をした事が無いこと。
そして、俺は真面目に好きな女の子について尋ねられた事がない、ことだ。
 
雛見沢に来るまで俺は勉強ばっかりで、そういう事は全然経験した事なかったし、それに、俺は別に………
 
 
 
 
 
 
「…レナって、可愛いよね。」
 
 
 
 
 
 
その言葉にドキン、とした。そして、慌てて視線を上げて悟史の顔を見ると、悟史は相変わらずにこやかに微笑んでいる。
その変わらない態度に軽くムッとしながら、何か言葉を返そうと思ったが……
 
―――――返せなかった。
 
 
 
「………圭一?」
「んな事言ってると、詩音に殺されるぞ」
「あはは……」
 
 
俺は何故かこの場に居づらくなって、そのまま席を立つ。
首を傾げる悟史に、俺は「トイレ。」とだけ伝えた。すると、悟史は俺に「いってらっしゃい。」と言う。
 
それから、特に行くところがない俺は、宣言通りにトイレへ行くことにした。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
俺はむしょうにイライラしていた。
悟史に対してなのか、それとも、さっき悟史に返事を返せなかった自分自身になのか。
 
 
『…レナって、可愛いよね。』
 
 
悟史の言ったこの一言がずっと頭から離れない。
レナが可愛いのは当たり前だ。俺だってそう思うし、悟史だって誰だってそう思うのは当然だと思う。
だからこそ、分からない。
 
 
 
 
(どうして俺は、あの時返事を返せなかったんだろう………。)
 
 
 
 
「可愛いよな!」と同意するもよし、「当たり前だろ」と言うのもよし。
普通に切り返せばよかったんだ。それなのに、俺は何故か悟史がそう思っていることに対してムッとして、
何故かその場に居ることに居た堪れなくなって、それで………
 
 
「くそっ、俺どうかしちまったのか……」
「…何がどうかしちゃったんですか?」
「し、詩音……」
「はろろ〜ん☆圭ちゃん、元気ないですねぇ」
「…………。」
 
 
トイレに向かう廊下でバッタリと詩音に会った。
詩音は興宮の学校に通っているにも関らず、ほぼ毎日のように分校に顔を出している。
(ちょっと前に、今度こっちに転校するとか、しないとか話していたような……。)
 
 
「詩音はいつも元気だよなぁ」
 
「当たり前です!ところで悟史くん知りません?」
 
「あぁ…悟史なら教室に居るぜ」
 
「ありがとです〜」
 
 
詩音はそのまま教室に向かって駆け出した。
そして、その時むしゃくしゃして不機嫌だった俺は、八つ当たりとばかりにその後姿に向かって声をかける。
 
 
「そうそう、さっき悟史がレナのこと可愛いなぁ〜って言ってたぞー」
 
 
それを聞くと、詩音は俺に返事もせず、物凄いスピードで教室に向かって走っていった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
「あ…………」
 
 
何となく窓の外を見ると、レナを見つけた。
日直の仕事で―――花壇に植えてある花に水をやっているのだ。
その姿が妙に絵になっていて、俺はしばらくの間見惚れていた。
 
柔らかい茶髪の髪と、優しげな瞳。レナは本当に可愛い。
そんな時、レナがふとこっちを向いた。それに驚いて、俺はついつい2、3歩後ずさりしてしまう。
レナはいつもの優しげな笑顔で俺に向かって手を振った。俺も振り返せばよかった、のに、俺は何故かそのまま走り出した。
 
恥ずかしい、照れくさい、それに――――
 
 
 
「はぁ…はぁ………」
 
 
 
俺はすぐさま男子トイレに駆け込んで、冷たい水で顔を洗った。
顔が熱い。凄くドキドキする。何でこんなにドキドキするんだ?
レナが、ただ、俺に向かって手を振っただけじゃねぇか。別に大したことじゃない。なのに、どうしてこんなに……
 
 
 
「………もしかして、俺……」
 
 
 
鏡に映った自分の顔を見て、俺はやっと気づいたんだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「悟史くーんっ!!!」
「む、むぅ……どうしたの、詩音。そんな慌てて……」
 
教室のドアを―壊してしまうのではないかと思うくらい―乱暴に開け放ち、
詩音は同じ部屋に居るクラスメイトの視線を一点に集めながら、ずかずかとまっすぐ悟史の元へと歩いて行く。
 
 
「れ、れれレナさんのこと、可愛いって……!」
「えっ?」
「どういう事なんですかぁ!?」
「む、むぅ……」
「も、もしかして悟史くんレナさんの事―――…はうっ!?」
 
 
悟史はよしよしと詩音の頭を撫でた。
そうすると詩音は、今までの凄い剣幕はすぐに収まり大人しくなる。
 
 
 
「詩音が一番可愛いよ。」
 
 
 
その一言で、詩音はあわあわと頬を染めながら「ずるいです…」と呟く。
詩音は凄く素直だ。嬉しい時、怒ってる時、悲しい時も、全身で表現出来るから。
 
 
(……圭一も、早く素直になればいいのにね。)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「圭一くん……っ!」
 
トイレから出て教室に戻る途中、後ろからレナに声をかけられた。
 
 
「どうしたのかな、かな?」
「えっ……」
「何かあった?それとも、何かレナに怒ってる……?」
「あはははっ、な訳ねぇだろ!さっきは、悪かった。ごめんな……?」
 
 
さっき――とは、俺に向かって手を振ったレナに、目が合いながらも無視した事だ。
突然無視されたら、相手が自分に対して怒ってるのではないかと感じるのは当たり前。
だけど、俺はレナに怒っている訳ではないから、素直に謝った。
レナは良かった、と安堵の顔で微笑む。
 
 
(…………可愛い、な。)
 
 
その笑顔にドキドキしながら、俺はレナの頭を撫でた。すると、更に頬を染めて赤くする。
そんな態度に気をよくしながら、俺は笑った。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
――――――俺は、レナの事が好きなんだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「悟史っ!」
「ん?どうしたの、圭一」
「俺、絶対負けねぇからな……!」
「…………?」
 
 
 
 
ラ イ バ ル に 戦 線 布 告 を !
 
(お前は俺の親友だが、恋愛に関しては少しの遠慮も、情け容赦もしねぇからな!!)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
>>あとがき
 
圭レナとサトシオンで、圭一と悟史を書きたかったはず、なんですが……
いざ書き上げて見ると意味が分からない\(^o^)/
圭ちゃんは鈍感なので、思いっきり勘違いすればいい、というのが結論。翌日にでも気づけば良いと思います。
 
にしても、圭一視点すっごく難しかった……。
たったこれっぽっちの文章なのに、凄くすごーく苦労しました(汗)修行あるのみですね……。
(圭一の口調が合っているかさえ、自信がないですorz)
 
では、ここまで貴重な時間を使って読んでくださってありがとうございました★
 
-2009.03.24-
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