幸せな夢の中と、残酷な現実。
 
どちらか好きな方を選べるとしたら、貴方はどちらを選びますか?
 
 
 
 
 
 
僕に相応しいエンディングは
 
 
 
 
 
 
自分の思い通りにならない事、ばかりだった。
こうなればいい、あぁすればいい、とか色々頭で考えていても、周りがそう動いてくれない。
そんな毎日に振り回され続けて、気がつけば僕は1人になっていた。
誰も自分の事を考えてくれない。理不尽だ。
僕は自分の事で手いっぱいなのに、他の事も気にしなくちゃいけないなんて……。
 
 
 
 
 
 
そろそろ疲れ果てて、どうにもならなくなった頃、
 
――――――僕は、壊れてしまうのではないかと怖くなった。
 
 
 
 
 
 
壊れてしまったら、僕はどうなるんだろう。
怖い。怖いよ。何で僕が、こんな怖い思いをしなくちゃいけないんだ……!!!
 
 
 
 
 
 
 
「沙都……子………」
 
 
 
 
 
 
 
夢の中は、幸せだった ――――。
何にも無い真っ暗な世界。でも、悲しみも憎しみもない。…笑う事も泣く事も、ない。
でも、少なくとも現実よりは幸せだった……。
あの苦しみには戻りたくない。少しぐらい寂しくても、あの時の辛さに比べたらこっちの方がいい。
 
あぁ、どうして僕は目覚めてしまったんだろう…!
そうだ、もう1度眠ればいい。そうすれば、再び夢の中だ。また、幸せな夢の中だ。
 
 
 
(本当に、それでいいのですか…?)
 
 
 
誰?誰だよ……。
 
 
 
 
(それが、貴方にとって本当の幸せなのですか?)
 
 
 
 
だって、現実に幸せなんてないじゃないか…っ
たくさんの理不尽に追い掛け回されて、ただ北条というだけで迫害されて、逃げても逃げても、
追いかけて来る悪魔のような村だ!!誰も助けてくれない。
助けを求めてもみんな知らん顔。
挙句の果てには、僕は自らの手で人殺しまでして!!
 
堕ちる所まで堕ちた僕を……誰が受け入れてくれる?
あの時だって、誰も僕のことなんて、少しも気にかけてくれなかったじゃないか…!!!!!
 
 
 
(本当に、誰も気にかけてくれなかった……?)
 
 
 
誰も気にかけてくれなかったさ!誰も………誰一人だって、僕のことなんか……っ
 
 
 
 
 
 
『 悟 史 く ん 』
 
 
 
 
 
 
………あれ?誰だっけ、この声。
何処かで聞いた気がする。何処で聞いたんだろう。
分からない分からない。でも、確かに僕はこの声を知っている。…………だから、何なんだよ!!!
 
 
 
(貴方は勘違いをしている。)
 
 
 
うるさいうるさいうるさい!!!
お前は誰なんだよ…ッ!もう僕のことなんてほっといてくれよ…!!!
 
 
 
 
(幸せになれるかどうかは、自分次第だという事に、早く気づいて。)
 
 
 
…………ッ。
幸せになれるかどうかは……自分次第………
 
 
 
 
 
 
 
(もう1度よく思い出して。本当に、誰も気にかけてくれなかった?)
(手を、伸ばしてくれなかった ―――?)
 
 
(もう1度、思い出して―――。)
 
 
 
 
 
 
『にーにー…ごめんなさい、いつも私のために……』
『悟史くん、何かあったらすぐ相談してね。レナ、いつでも相談にのるから!』
『私は園崎の次期頭首なのに……何も出来なくて…ごめんね……っ』
『悟史、ボクは悟史の事、大好きなのですよ』
 
 
 
あ………みんなは、僕を気にかけてくれていた?
それとも、ただ同情していただけだった?僕には分からないよ、分かる訳ないじゃないか!
みんなの本心なんて…っ!!
 
 
 
(そう……人の心は分からないです。だからこそ、言葉にしなくてはいけなかったのではないですか?)
 
 
 
言……葉…………。
 
 
 
 
 
 
 
(貴方は1度でも、言葉で言いましたか……?)
 
 
 
 
 
言いたいこと………伝えたい、こと?
そうだ。僕は……何も言わなかったんだ。ただ、自分だけが辛くて苦しい目に合っているんだと、
自暴自棄になって、1人でイラついてみんなを遠ざけて……1人になりたい、なんてただの言い訳。
 
 
 
 
 
 
 
――――――本当は構って欲しかったんだ。
 
 
気づいて、欲しかったんだよ……
 
 
 
 
 
 
沙都子を庇い続けるのは、僕にとって凄く辛くて大変な事なんだ。
だから、少しでいいから、叔母と仲良くできるよう努力して欲しい。
 
魅音と梨花ちゃんの立場は分かるよ。でも、少しだけでいいから、助けて欲しいよ。
 
レナ、ありがとう。レナに話を聞いてもらえたから、少し楽になった。これからも宜しくね!
 
 
 
…言えばよかったのに。僕は何を遠慮していたんだ?
仲間に、大切な友達に、一体何の遠慮を……!?
 
気づいて貰うんじゃなくて、自分から勇気を振り絞れば良かったんだ。それなのに、僕は――――。
 
 
 
 
 
 
 
(悟史、貴方はたくさん苦しんだ。後悔もした。だから、もういいのです。)
(貴方は帰らなくてはいけない。)
(分かり合うのは、今からでも遅くないのではありませんか……?)
 
 
 
 
今からでも、遅くない……?
 
 
 
 
(貴方を、すぐ傍で待っている人が居る。)
(ずっとずっと、待っている人達が居る。)
 
(貴方は、幸せになれる。夢の中ではなく、現実で幸せを手にするために戦いなさい。)
 
 
 
 
 
 
ずっと、待っている人………
 
そうだった。ずっと、ずっと僕を呼んでくれていた人が、居たんだ………。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「悟史くん!!!」
「…………し、おん。」
「良かった、もう目を覚まさないかと思っちゃいました……っ」
「あはは、大げさだなぁ、詩音は……」
 
ピッ、ピッと規則的な音が鳴り響く病室。
詩音が監督を呼び出そうとナースコールに手を伸ばす。僕はその手に、自分のそれを重ねた。
 
 
詩音の驚いた目と合う。まるでエメラルドのように深くて澄んだ綺麗な瞳。
 
 
 
 
 
 
「…まだ、間に合うかな。」
 
 
 
もう遅いと悲観した。何もかも無くしたと絶望した。
取り返しのつかない事をしたと、自らの罪を嘆いた。
 
そして、全てを放棄して眠りについた。
幸せになる事も、罪を償う事も、僕は何もかも投げ出したんだ。だから僕は、現実に戻る事を怖がった。
 
 
 
 
 
「間に合うなら、僕はこの世界で生きるよ。」
 
 
 
 
 
幸せになるために、この世界で戦いたい。人任せじゃ駄目なんだ。
せっかく気づいたんだ。気づけたんだ。やっと、起き上がることが出来たんだ。
 
僕は幸せになりたいから、まず僕自身を変えないと。…違う、変わりたいんだ。そして、強くなりたい。
 
 
 
 
 
僕に相応しいエンディングは、
 
(ハッピーエンドか、バッドエンドか。それを決めるのは、他でもない僕自身。)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
>>あとがき
 
悟史の独白でした。これが、もしかしたら私の結論なのかもしれません…。(最初、タイトルは北条悟史解でした。)
前書いた「ヒトカケラ」のあとがきで語ったんですが、悟史は答えに辿り着いたのか否か。
…辿り付いて居なかった、というのがこの話の結論。
実際はどうなのか分かりませんが、悟史は沙都子に伝えてないんですよね。
悟史を一番苦しめていたのは、沙都子だと思いますし、その事を沙都子には言っていない。(と思う)
それは答えに辿りついたとは言えないんじゃないかと、よくよく考えてみればそう思います。
 
飛躍した考え方をしていたなぁ、とちょっと反省。
ただ、悟史くんもどうにか救われて欲しかったという願いと、どうして救われなかった(原作終了時では)という気持ちがあったんだと思います。
 
実は、タイトルが決まらずずっと放置でした\(^o^)/
ではここまで貴重な時間を使って読んでくださってありがとうございました!!
 
-2009.05.12-
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