急遽、突然、そして確実に悪い方向へ変化していく日常――――。
 
それでも、変わらないのは思い出の中の君……









夢 の 中 で 会 い ま し ょ う









ここは、何処だ?………ここは、見慣れた通学路だ。
俺は毎日この道を通って、雛見沢の分校に通っていた。
ほら、その証拠にあそこでレナが俺に向かって手を振っている。キラキラ輝く、太陽にも負けない笑顔で。
 
 
 
 
そうか。これは、夢か――――。
そりゃぁいい。夢の中でも何処でも、また会えたんだから。
 
 
今はもう、現実の世界では、見る事も叶わない、レナの笑顔。
幸せなんて簡単に壊れてしまう事も、知らない所で変わっていく君も、
俺だけ取り残されていくという空虚さも、全て知ってしまった。
 
知らなければ良かった。知りたくなかった。
ただ、俺はずっとあの日常が続けば良かった。本当に、それだけだった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「圭一くん、また遅刻!魅ぃちゃん待ちくたびれてるよっ」
「わりぃ!いやぁ、仮にもレナに会うんだからな、鏡と睨めっこしてたら遅くなっちまった」
「は…ぅ……。もう、圭一くんたら……」
「あっはっは!照れてるのか?」
「そ、そんなんじゃないよ……!」
 
 
 
そう冗談を言えば頬を赤く染めてはにかむ。
あぁ、可愛い。あぁ、愛しい。俺はきっと、何処かでこの笑顔に救われていた。
 
 
俺は、まるで逃げるようにこの雛見沢に来た。
1度最低な間違いを犯した俺を、仲間達は当たり前のように受け入れてくれた。
自分の過去を、忘れかけていたんだ。あぁ、俺は何て罰当たりな奴なんだ。忘れていいはずがない。
俺は最低な行為をしたんだ。卑怯だった。卑劣だった。そして、弱かった……!!!
 
 
 
 
「行こ、圭一くん……!」
 
 
 
 
もう、現実の世界で、こんなレナの笑顔は見られない―――――。
 
 
 
レナの豹変。言動、行動、全てがおかしかった。
どうすればいいのか分からず、どうすれば心を許してくれるのかも分からなくなった。
 
ただ、レナの目がとても怖くて、怖くて堪らなくて。
そして、俺の全てを見透かしているようなあの目で見られれば見られるほど、
俺は1人、酷く後ろめたい気持ちになっていた……!
 
 
 
 
「…どうしたの?何かあったのかな、かなっ」
 
 
 
 
この笑顔に、俺は、何て答えればいいんだろう――――。
 
 
俺は知っている。この世界は夢だ。そう、夢の中。
だからこそ、レナは俺に向かって微笑んでくれている。だからこそ、レナは幸せに笑っている。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
もう、現実世界では見られないのであれば、夢の中だけでもいい。
 
 
俺は、レナのこの笑顔を見ていたい。
 
 
 
 
 
優しく微笑んで、はにかんで、幸せで楽しそうに、日々を過ごす君を、見ていたい。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「………何でも、ないんだ。」
 
 
 
 
 
だから、笑っていてくれ。
 
 
 
 
「……圭一くん、どうして泣いているの?」
 
 
 
 
なぁ、また眠ったら、会えるのかな。俺の大好きだったレナに、会えるのかな?
頑張り屋で、一生懸命で、誰よりも周りを見ていて、そして誰よりも優しい、レナに―――――。
 
 
 
 
 
「なぁ、レナ……俺はきっと、レナが好きだった。」
 
 
 
 
 
だからこそ、変わっていく日常に戸惑って、俺の知らないレナを怖がって、
 
だからこそ、俺は自分の気持ちを押し込めた。
 
 
 
 
 
 
 
レナが好きだったなんて、そんなの全部嘘だ。
 
そうやって無理やり自分を納得させて、現実から逃げようとしている。
この夢の中でずっと暮らしていけたら、どんなに楽だろう、とも思っている。
そうだ。俺はずっと目覚めず、この夢の中で、あの楽しかった日々の続きをするんだ。
 
 
もう、現実世界では届かない、幸せな日々の続きを―――――。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「……………目覚めて。」
 
 
 
え………?
 
 
 
 
 
「圭一くんなら、取り戻せるよ。」
 
 
 
 
 
そう言ったレナは何処か寂しそうで、そして、全てを理解していた。そう、全てを。
レナが私も頑張るから、と一言付け加えた時、この世界が歪んだ。
 
 
 
 
 
待ってくれ、まだだ……!
 
まだ……!頼む、もうちょっとだけこの世界に居させてくれ……!
 
 
 
 
 
そんな俺の願いは叶わず、徐々にこの世界は壊れていく。
でも、それでも俺は、レナを見ていた。レナは笑顔で、俺に手を振っていたからだ。
 
 
 
 
 
 
なぁ、レナ……俺さ、もう現実世界は壊れてしまったけど、でも俺のレナに対する気持ちは壊れてないんだ。
少しも変わっていないんだ。だって、今でも俺はレナのことを……
 
 
だから、もし、俺が、現実世界で幸せを取り戻せなかったら、
またここに来てもいいかな?また、レナに会いに来ても、いいかな……?
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
夢 の 中 で 会 い ま し ょ う 。
 
(現実の君も、夢の中の君も、やっぱり君だから。声が枯れるまで、俺は好きだと叫びたい!)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
>>あとがき
 
久々圭レナ。圭レナというよりは、レナ←圭ですね。
あぁ、こういうネタはサトシオンでやりまくった記憶があります。でも、そこは開き直る。
 
この話での現実世界は、罪滅ぼしでも鬼隠しでも、はたまた違うIfの世界でもいいです。
現実世界ではオヤシロモードになってしまったレナに、圭一が夢の中で普段のレナと会う話が書きたくなって
書きなぐった物です。にしても、ひぐらし本編は微妙な圭レナ要素がありすぎて萌えです。
(3人で登校しているのに、2人きりの時間が出来ていたりとか)
 
では、ここまで貴重な時間を使って読んでくださってありがとうございました☆

-2009.05.26-
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